第136話 日枝神社

一瞬金色に輝いた後、4人は日枝神社の境内の中にいた。

「よかったー!東京は晴れだね。いい天気で気持ちがいいわ」

赤い銅鐸を持って背伸びをする摩耶。このシーンだけ切り取ると普通の修学旅行に来た女子高生だ。

「なんと・・・これが瞬間移動か・・・本当に一瞬だな」

目の前に立つ、見慣れた衆議院議員会館を見て広田がつぶやいた。

「広田さん、いかがですか?ビックリしたでしょう?これが瞬間移動です。私も最初体験するまで信じられなかったんです」

「さっき陳情を受けてから5分も経っていない・・・これは本当に世の中が根幹から変わる事になるな」

ロレックスの腕時計を見ながら広田がつぶやいた。

「でしょう?しかし広田さんと同行できてよかったです。今から摩耶さんは国会でまさしく針のむしろに座る訳ですから、味方は1人でも多い方が助かります」

「どこまで助けになるかわかりませんが、精一杯やります」


「さあ、みなさん。せっかくだから神社にお参りしましょう。日枝神社の御祭神は素戔嗚命の孫にあたる大山咋神(おおやまくひのかみ)で厄難を払ってくれるそうよ。国会での厄難を吹っ飛ばせ!」

「はっはっは、こりゃまた頼もしい限りじやのう」


「パンパン」と2回柏手を打って一礼した4人は本殿の階段を下りた。


「あの・・・広田さん。全然話は変わりますが質問いいですか?」

「何ですかな?吉原さん」

「現在の児童施設に対する日本政府の予算を教えてもらえませんですか?」

「唐突ですね。確かこども家族庁予算が1700億円だったかな」

「それと直近の防衛費を教えてください」

「確か6兆円だったかな?それがどうかしましたか?」

「いや、現状を鑑みて1700億円では子供たちが自立するに足らないような気がするんです。しかも戦争が無くなればその桁違いな防衛費を子供たちに回せるなと思いまして・・・すいません素人意見で」

「そうですね、最近はDVなんかで虐待された幼児の保護や、シングルマザーの増加による育児放棄の増加でまだまだ足らない現状ですが。吉原さん何か児童施設に関係あるのですか?」

「お恥ずかしい話ですが私は昔、神戸の若葉園という孤児院で育った孤児なんです。それでこのたびの瞬間移動が彼らにとって救済策にならないかと模索しています」

「はっはっは、こりゃ偶然だな。広田君、この際君の経歴も紹介してはどうかな?」

「はあ、実は私も両親がいなくて、福島県会津市の『希望の園』という孤児院で育ったんです。その時の支援者の中に地元の代議士がいまして、施設を出てからは彼の秘書を長らくやってまして今に至ります」

「そうなんですか、奇遇ですね。私は神戸で出版社を経営している摩耶さんのお父さんに拾われて現在があります。一緒に恵まれない子供たちのために何かできればいいですね」

「はい、これも何かの縁ですのでそういう話なら全力で応援させていただきます。よろしくお願いします」

にっこり笑って握手する2人。


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