第134話 旅行組の帰還
3人を乗せた車が渦森台・住吉神社に着く直前、摩耶にメールが入る。
「摩耶ちゃん、今霧島神社です。これから神戸に帰ります。いい天気、いい料理、いい温泉にみなさん大満足&全て順調。堀」
「よかった、堀先輩とお母さんの任務は無事終了したみたいね」
微笑みながらスマホを鞄に戻す。
いよいよ神社の石段前に車が到着した。
神社に続く階段の前に「神戸ドリーム観光」とボディ書かれた大型バスが停まっていた。
ゆっくり広田幹事長と中居剛三、摩耶が車を降りる。
運転手が3本の傘を差し出す。
「ほう、こんなところに観光バスが?」
「多分そろそろ霧島神社から帰ってくるんだわ」
「さあ、我々も神社に上がりましようや」
急な石段を上がる3人に上の方から大音声が突如聞こえてきた。
「さあみなさん、足元が濡れていますからご注意くださいね。あいにく神戸は雨模様ですが、旅行中は晴天が続いて良かったですね。これもきっと神様のご利益ですね」
青い旗が、石崎の陽気な大きな声とともに階段を下りてきた。
「いや、石崎さんありがとう。楽しかったよ」
「本当。鹿島と伊勢、出雲と霧島を巡り、食事もおいしかったね。まるで夢のようだよ」
「長生きはするもんだねぇ」
「あのー、みなさん。今回の旅を来週号『神戸シティライフ』の記事にしたいのですが、よろしいですか?」
吉原が尋ねた。
「全然大丈夫ですよ!」
「是非大いに宣伝してください」
「ありがとうございます。最近は個人情報がうるさくて、写真の使用などの本人の許可が必要でして」
「構わないから遠慮なく」
「いい写真使ってね」
その言葉に写真を撮る吉原。
お土産をたくさん抱えた老婦人たちが、ワイワイ言いながら傘をさして石段を下りてきた。
「あれー?摩耶さん?」
「あ、本当。摩耶さんね」
「昨日途中で居なくなったから寂しかったわ」
「なんと、今日は学生服なのね」
50人の観光客に取り囲まれる3人。
「はい。皆さんお帰りなさい。昨日は途中で任務放棄してごめんなさい。旅行はいかがでした?」
「神社の旅は最高だったよ。」
「こんな短期間でたくさん周れたんだから。瞬間移動さまさまだ。」
「そう、喜んでもらってよかったわ。堀先輩もお母さんもこれで完璧ね?」
「「はい!」」
群衆の後ろで笑顔で親指を立てる親子。
「播磨先輩は相変わらず?」
「はい」
うつむいて親指を下に向けた。
相変わらず貧相である。
「ありゃ!隣にいるのは広田幹事長じゃあないか?」
「本当だ、何でこんなところに?」
「まあ!テレビより男前ね」
「どうも、みなさん。自由奔放党の広田です。日本国中の参拝ツアーとお聞きしました。ご苦労様です」
「ところで幹事長、消費税どうにかならんのか?まだ上げるのか?」
「自由奔放党は少子化に対して何をやっとるんだ?」
「わしゃ、防衛予算多すぎると思うがなあ」
「前から思っとったが、今の中州根政権はアメリカに忖度しすぎだろう」
「はい。あ、はい。おっしゃる通りです。はい」
にわかに神社前が有権者の陳情場所に変わった。
「ふーちゃん、ちょっと」
吉原がそっと手招きをした。
「あ、ジョージおじさん。お帰りなさい。今からこのおじさんたちと東京に行くの」
「国会の証人喚問・・・だろ?」
「そう、めんどくさいけどメグが言うには、これは人類が『絶対に越えなければならない壁』らしいの」
「そうか、決戦だね。ぼくも取材を兼ねて東京に連れて行ってもらえないかな」
「私は・・・いいけど。他の方が・・・」
「はっはっは、いいじゃあないか。旅は多い方がいい!確か君はジャーナリストだったな?」
「あ、はい。申し遅れました。摩耶さんのお父さんが経営する雑誌社『神戸シティライフ』の編集長・吉原です」
中居に深々と礼をして名刺を渡す吉原。
隣では有権者たちに、もみくちゃにされながら笑顔で頭を下げる広田の姿。
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