第133話 いざ国会へ
翌朝9時 影松高校正門前
「多分あの黒い車がそうだと思う」
摩耶と中居、藤田校長が小雨の中、傘をさして校門の前に立っている。
滑るように黒塗りの車が校門前に停まった。
「ガチャリ」と音がして運転手が先に降りて後部のドアを開いた。
三浦友和に似た、恰幅のい黒スーツの男性が、運転手の傘を借りて降りてきた。
襟の国会議員バッチが金色に輝いている。
「やあ、初めまして。自由奔放党幹事長の広田です。あなたが噂の摩耶さんですね。今日はよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。摩耶です」
差し伸べられた手を、小さな手で握り返しながら摩耶が応じた。
続いて車から中居剛三が降りてきた。
「あ、義父さん。おはようございます。義父さんも東京まで同行ですか」
「あたりまえじゃ、前回も言ったようにワシの命に代えても摩耶さんをお守りせねばならんからな」
「そうでしたね。私は行けませんが、よろしくお願いします」
「広田幹事長、初めてお目にかかります。私が校長の藤田です。まず本校の名前の由来はいにしえの神功皇后が三韓征伐のおりに・・・」
中居が藤田校長を手で遮り、幹事長に向かって話しかける。
「幹事長。摩耶さんは見ての通り、普通の女子高生ですので何分お手柔らかにお願いします」
「わかりました。あなたの御父様には大恩がありますから、私なりに精一杯頑張ります」
「摩耶さんがんばって!」
「大人たちに負けるなー」
「テレビで応援しているからなー」
教室の窓からは、鈴なりになった生徒たちが一斉に摩耶に声をかける。
間違いなく学校のアイドルである。
「おい。みんな授業中だぞ、早く席に着け!」
先生の言葉で正門前が静かになった。
最後までメグと秀、星が親指を立てているのを見て、摩耶も笑顔で親指返しをした。
「さて、摩耶さん。車にお乗りください。これから新神戸駅まで向かいます」
「え、新幹線で?東京に行くのにですか?」
「あたりまえだろ?グリーン車で切符はすでに手配してあるが、飛行機の方がよかったのかな?」
「いえ、できたら瞬間移動しませんか?切符が無駄になって悪いのですが」
「幹事長、せっかくだからそうしましょうや。おい運転手君、渦森台の住吉神社まで行ってくれんか?」
「なるほど、それでは勉強ですから是非その瞬間移動を体験させていただこうかな。おい運転手君やってくれ」
「かしこまりました」
3人を乗せた車は雨の中、渦森台への急こう配を登って行った。
「あの・・・国会議員の移動費って年間いくら貰えるんですか?」
「唐突な質問だな。我々国会議員は文書通信交通滞在費といって月100万円が支給される。だから年間1200万円になるな」
「たくさん頂けるんですね」
「まあ、そのくらいないと議員活動ができないからね、むしろ少ないくらいだ」
「それと・・・議員さんの数は何人いるんですか?」
「今日出席する衆議院が465人、参議院は248人いるが・・・」
「合計約700名ですか・・・掛ける1200万円ですから年間84億円ですね」
「そういう計算になるかな」
「すべて税金ですよね、今からはその無駄がなくなる時代が来ますよ。国民の税金を無駄にしないでください!」
「はっはっは、幹事長、早速一本取られましたな。こりゃ今日の国会の答弁が楽しみじゃて」
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