第132話 豚の貯金箱

「カランカラン」

再びウィングの店のチャイムが鳴った。


「いやー、長井ナイスキーパー!さすが守護神」

「松っつんのセンターリング最高やったでー」

「まあ、なんと言っても殊勲賞は俺の3点目だろうな」


ドヤドヤと30人ぐらいのサッカー部の連中が入ってきた。

おかげで一気に店の温度が上がる。


「おー!秀と星だぜ、こんなところにいたのか!今日は送ってくれてありがとな。おかげさまで時間に間に合って良い試合ができたよ」


「さよか、ほんで試合の結果どないやった?負けたとか言うたら承知せえへんで」

「はじめての瞬間移動を経験した興奮も手伝って、結果は3-0で完勝やった」

「それはよかったんだナ。ということは、ぼくたちも勝利に貢献できたんだナ」

「ああ、おかげで次の準決勝に出場できる。改めて礼を言うよ。今日は本当にありがとう」

サッカー部の主将黒岩が言った。

「おーい、全員起立!2人に対して礼!」

「「「「ありがとうございました!」」」

30人の大音声が店内に響く。

ノートの暗記に集中できずに、こめかみをさらに押さえる摩耶。


「今日はサッカー部からお礼にウイングバーガーセットをご馳走させてくれ」


「礼やなんて、いりまへんがな」

「そうなんだナ。同じ学校の生徒同士なんだナ」


「まぁ、そう言わずに俺たちの感謝の気持ちを汲み取ってくれ。マイさん、例の豚貯金箱に今いくらあるかな?」

黒岩がマイに尋ねた。

「ちょっと待ってね」

マイは奥に入って、一抱えもある透明な豚の貯金箱を重そうに持ちあげた。豚の胴体は「サッカー部」と言う紙がテープで張られてあり、その中には、500円玉がほぼいっぱいになっている。


「そっちまで重くて運べないけど、これだけあるわよ」

そう言うマイの後ろには「野球部」、「バスケット部」、「陸上部」と書かれた豚が10頭ほど見えている。


「こいつら、この500円玉の数だけメグのおっぱい触った言うこっちゃ。ここは遠慮したらあかんな」

「やっぱりおごってもらうんだナ」

「まあ、いいじゃあない。触られても減るもんじゃあなし」

親指で自分の胸を指さすメグ。


「さよか、ほな黒岩はん。セット5つ頼みまっせ」


「了解!マイさん、ウイングバーガーセット5つをそちらのテーブルに、こっちは30人前よろしくお願いします。」

黒岩の声が響いた。


「なんか生徒たちにご馳走されるのも妙な気分だなあ。しかしまあ、今日はバスが故障して移動の手伝いをしたのだからここは甘えるとするか」

「そうよ、すべては私のこの胸のおかげだから遠慮しないで」

自慢の胸を突き出すメグ。


「ところで秀、来週の試合が淡路島であるんやけど、また『どこでもドア』お願いできへんかな?」

黒岩が頼み込んできた。

「そらまあ、できんことはおまへんけど・・・」

「あ、どうせなら今後のサッカー部の試合、全部移動頼むわ」

「ついでに試合も出てくれ!頼む!」

「「「お願いします!!」」」

サッカー部全員が起立してお辞儀した。


「なあ、星。なんか急に厚かましい態度になったと思わへんか?」

「うん、なんかぼくもむかついてきたんだナ」

「いいじゃあないの、手伝ってあげなさいよ」


「よっしゃわかった!移動はワイにまかせとけ!マイはん、ウイングバーガーセットさらに5つ追加や!」


「「「やったー!」」」

「「「サンキュー!!」」」


「はーい!毎度ありー!ちなみに私はアミよ」



「プルルルル」中居のスマホが鳴った。

「義父からだ。たぶん明日の国会出席のことだろう。もしもし、あ、義父さんですか?あ、はい。明朝9時に学校前ですね。え?広田幹事長も同行ですか?わかりました、摩耶さんに伝えます。はい、それでは明日よろしくお願いします」


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