第131話 水晶酔い
「摩耶ちゃん、それはそうと鹿島から伊勢、そして出雲から神戸と短期間での遠距離移動疲れてない?」
大学ノートに集中している摩耶に向かってメグが聞いた。
「あ、わかる?さっき店に入ってから軽いめまいがするの」
「やっぱり・・・さすがにちょっと無理が祟ったんでしょうね」
「あかん、典型的な水晶酔いやな」
「やっぱり最初の遠距離移動は辛いんだナ」
「水晶酔い?そう言えば以前、瞬間移動にはそんな弊害があると言ってたな?水晶で増幅された磁場のパワーが人体に影響するとかなんとか」
中居が気遣うように摩耶を見た。
「そうなの。はじめての遠距離で、しかも複数回移動した人は、必ず水晶酔いになるの。まあすぐに回復するから、一種の車酔いだと思って我慢してね」
「それでこんなに頭がズキズキするのね。」
こめかみを押さえる摩耶。
「ジャジャーン!!!」
大きな声でメグが、摩耶の目の前に銅鐸を置いた。
大きさは高さ50センチ程である。
「そう思って、はいプレゼント!かわいいでしょ?今度から遠距離移動にはこれを使ってね」
「え?銅鐸?このカラフルなのが?」
摩耶がミッキーマウスやミニー、グーフィーの絵柄が入った真っ赤な銅鐸を持ち上げて言った。
「ほえー、こりゃまためちゃくちゃかわいい銅鐸でんなー」
「昔の地味な銅鐸と比べて超ド派手なんだナ」
「当たり前でしょ、あんたたち。かわいい女子高生にあんな昔のダサいデザインの銅鐸を渡せるわけないじゃない!見た目だけじゃあないのよ、効果も昔のよりパワーアップしてあるわ!」
「ダサいって、そもそもあんさんがあのデザインが渋いからええ言うたんやで。なんや『大人の味がある』とか言うて」
「そうなんだナ。僕も地味だからもうすこしデザイン変えたらって言ったら、一撃で恫喝された苦い思い出があるんだナ」
「な、何言ってんのよあんたたち!センスってのはね、時代とともに変わるものなのよ。今はこのディズニー柄のかわいい銅鐸を持って瞬間移動にレッツゴーよ!そういう時代なの!」
「またそんな調子のえーこと言うて、次の時代には心変わりして、さっさと違うデザインにする気なんやろ」
「毎回振り回されるのはいやなんだナ」
「ちょっとー!私がいつあんたたちを振り回したのよー!」
「はぁー・・・」
3人のそのやりとりを横で聞いていた摩耶は、ミッキーマウスの絵柄を見ながらさらに頭が痛くなるのであった。
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