第129話 レイライン理論
「あ、レイラインについては、去年我がS研が一度真剣に挑戦したことがあるの。ちょっと説明します。摩耶ちゃんバトンタッチしていい?」
「はい、どうぞ」
S研、副部長のラスカルが摩耶から棒を受けとって日本地図の前に立った。
「なんだ?堀さんが日本地図を前に何か講義をしてるよ」
「本当だ、摩耶さんもいるから、多分興味深い話でしょうね」
「ちょっと行ってみましょうか」
見学を終えた観光客たちが、階段を降りてきて棒を持つラスカルの前に自然と集まってきた。
「実は今から移動する霧島神社と、昨日行った鹿島神宮を直線で結んだなら、この中には伊勢神宮も入ってるの」
長い棒を地図上の霧島と鹿島に当てて説明するラスカル。
「本当だ!」
「3つの神社が1本の線の中にきれいに収まった!」
「これは偶然なのかな?」
観光客から感嘆の声が上がった。
「はい、『偶然か人為的なものか』どう思うかは皆さん次第なんですけれども、普通に考えて確率的に1本の線上に、代表的な神社が複数配置される事は考えにくいと思います」
「そうだよな。昔の誰かが意図してやらなければできないことだよな」
「人為的だな」
「しかし地図のない昔の人たちにそんなことが可能なのか?現在の科学技術を使っても難しいんじゃないのか?」
「もっと言いますと、この線上には富士山、明治神宮、皇居も入っています」
「皇居は昔の江戸城の跡地なので、およそ400年前にこのレイラインの存在を知っていた人が徳川幕府の中にいたと言うことだな」
石崎が感心して聞いている。
「そう考えられます。また明治神宮は明治天皇が崩御された後にできた比較的新しい神社なので、我々世代の人の中にもレイラインを知っていた人がいたはずです」
「つまり皇室関係の中でこのレイラインの存在を知っていた人がいて、敢えてこの地を選んだと言うことだな」
吉原が大学ノートから顔を上げてつぶやいた。
「そうなんです。現在でもこのレイラインのパワーの大切さを理解している人がいると言う証左です」
「現在でも?」
「そうです。実はこれは『都市伝説』とも言われているんですが、この直線上には最近できた東京スカイツリーが正確に収まっています」
「え?あのスカイツリーが?」
「そうか・・・スカイツリーはなんか変な場所に立つなぁと思っていたんだ」
「観光地にしては狭すぎる土地だよね」
「東武電鉄の中に、このレイラインのパワーにあやかろうと言う人がいたのかな?」
「しかし凄い話だなぁ」
「そうね。びっくりだわ」
観光客たちは先ほど見学した古代出雲歴史資料館の内容も忘れて、ラスカルのレイライン理論に没頭した。
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