第63話 メグの要求

「いやー、全く奇想天外な話だな。以前に古来の『なんば歩き』を教えてもらっていなかったら単なるヨタ話で片付けていた」

藤田校長が目を丸くして言った。


「しかし全て事実です。それは私が保証します」

中居が言った。


「君がそこまで言うなら、なおさら間違いなさそうだな。では全て信じて君たちをカタカムナ人と言うことで話をさしてもらう」


「ご理解ありがとうございます。校長先生、遠慮なく何でも聞いてください」

メグがいつものように陽気に答えた。


「まずは、君たち3人に聞く。なぜ摩耶さんにその能力を教えたのかな?」


「それは簡単です。私たちカタカムナ人は常に人類に対して段階を経て新しい技術を教えてきました」


「なんと、人類の成熟度ごとに新技術を教えてきただと?」


「せや。校長はん、ちょっとホワイトボード借りまっせ」

秀が立ち上がり、かたわらのホワイトボードに書き始めた


「人類が進化して理解できる順番に


農業

窯業

製鉄(冶金)

建築学

航海術

天文学

数学

哲学

物理学

医化学

電気学

電子工学

原子力学

遺伝子学


磁場力学

重力制御学


以上の16個や。最後の2つがこれからやねん」


「つまり摩耶さんに教えた瞬間移送は磁場力学になるわけか・・・」


「そうなんだナ。このようにぼくたちは人類が消化不良を起こさないことを前提に順序よく教えに来ていたんだナ」


「そうか・・・人類の科学の歴史は実は全てが君たちのおかげだったと言うことか」


「そうなんだナ。だから今の世界では次の能力、すなわち瞬間移送が適切だと考えたんだナ」


「よくわかった。という事はその技術を世間に公表しても良いと言うことなのかな?」


「はい、校長先生。それどころかどんどん宣伝していって欲しいんです。そのことによって、この技術が農業などと同じように普通の技術と思っていただけることにつながるからです」


「わかった。実は今日君たちを呼んで確かめたかった事が2つある」


「何でしょうか?」


「1つ目は、下に集まっているマスコミの要望に応じて素直に摩耶さんを世に出して良いかどうかだ、2つ目はその背後にある君たちカタカムナ人の存在そのものを世に出していいかどうかだ」


「そんなもん両方やってもらってかまへんで。何なら今から下に集まっているマスコミたちをこの部屋に呼んで聞かしてあげたらどうでっか?摩耶はんもOKでっしゃろ?」


「わ、私はあなたたちがそう言うならOKです。心の準備はできています」

摩耶が静かに答えた。

仕草がやはりメーテルに似ている。


「わかった。その前にもう一つ要望はいいかな?」


「なんでもどうぞ」


「私自身が確信を持ちたいので、その瞬間移送を経験させてほしい。その上でマスコミ等の対応を考えることにしたい」


「なんやそんなことでっか。全部オッケーでんがな。なぁメグはん?」


「はい、この会議の後でも移送体験をしましょう。それとこの場を借りて私から提案があります」

メグがホワイトボードの前に立った。


「その交換条件といってはなんですが、私たちに学校内に特別教室の設置を認めて欲しいんです」


「特別教室?」

藤田が尋ねた。


メグはマジックで大きく「ミスマルノタマ教室」と書いた。


「そうです。摩耶ちゃんにも教えたミスマルノタマと言う瞬間移送に必要な玉をまとえる方法を教える教室です」


「それは授業時間内に必要なのかな?」


「いえ、活動は放課後からで結構です。まあ1つの部活動だと思っていただければ幸いです」


「わかった。それは許可しよう。だいたい人数的にはどう考えてるんだ?」


「最初は1教室のスタートでやりますので50名位で考えています」


「わかった、明日からでもやってもいいぞ」


「ありがとうございます。では会議は以上ですね」


「ああ、今から移送体験をしたら明日にもマスコミを呼んで摩耶さんを正式に紹介するつもりだ」


「じやあ摩耶ちゃん、校長先生に移送体験をお願いね」


「わかりました、では行ってきます」


校長と摩耶がドアを開けて出て行った。

2人が校門を出たのを見た大勢のマスコミたちの大音声がにわかに階下に聞こえてきた。


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