第62話 放課後 校長室
放課後 本館4階校長室にて
摩耶とメグを含めた4人が校長室のドアの前にいた。
「ほな、開けまっせ。みんな心の準備はよろしいでんな」
「今からあの長話の『牛よだ』との会議なんだナ』
「せや、なんや気が重いなぁ」
「そうなんだナ。それでなくても話が長いので有名な校長と会議とはまさに死ぬ覚悟なんだナ」
「まぁアンタたち、そう言わないの。さあ、さっさと入りましょう」
「「「「失礼します」」」」
覚悟を決めた摩耶とメグを含めた4人の声が響いた。
ドアを開けて校長室の中に入ると、すでに中居先生と校長先生はゆったりとしたソファーに座って彼らを待っていた。
「いやー、よく来たな君達。まずはそこに座りたまえ」
中居の言葉に4人が向かいのソファーに腰をかけた。
「藤田校長、この面々が今話題になっている瞬間移動の張本人たちです」
「そうか」
藤田校長がゆっくり4人の顔を見回した。
「すまんな君たち、わざわざ来てもらって。えーっと、向かって右から摩耶さん、卯原さん、和泉くん、保倉くんです」
「お、卯原さんは以前食堂で『難波歩き』を教えてくれたことがあるから顔は覚えてるな」
メグの顔を見て藤田校長が言った。
「覚えていただいてありがとうございます!」
メグが軽く会釈した。
「なんだ、既に顔見知りだったんですか?」
「そうだ。日本古来の筋肉を使わない歩き方や立ち上がり方など彼女に教わったことがある。そもそも人間の身体の基本構造とは・・・」
いつもの長い話しになりそうなので、慌てて中居は手を出して藤田校長の話しを制した。
「そ、そうですか、それなら話は早いですね。彼女たちは自称カタカムナ人と名乗っており、なんでも新しい技術を現在の日本人に教えに来たと言うことです」
「ほう・・・それは興味深い話だな。しかしそのような夢物語も昨日までなら信じなかったが、流石に今朝からのこの報道陣とネットを見ると、もう信じざるを得ないと思う。そもそも今のマスコミは民主主義の概念が強くなんでもかんでも・・・」
また中居の手が出た。
「そ、そうですね。私も最初は半信半疑だったのですが、実際に卯原さんの肩につかまって、お化けトンネルから渦森台までワープした経験がありますからこれも疑いようのない事実です。まずはこのYouTubeを見てください」
中居は自分のスマホを校長の前に差し出した。
それを食い入るように見つめる藤田校長。
「なるほどな・・・これが瞬間移送か」
「そうです、摩耶さんが卯原さんに伝授された技術です。あ、それと校長、今日は時間がありませんから本題だけ手短にお話しください」
スマホ画面のYouTubeの閲覧数が3000万人を超えていた。
「おっほん、ワシの話はいつも手短かだから心配ご無用!それより午後になって神戸SEAテレビ、近畿テレビ、毎夜新聞・・・その他いろいろな報道機関から摩耶さんにインタビューしたいと執拗に迫られて困っていた。もちろん全ての報道機関には『学業が忙しい』の一言で止めている状態だ。あれを見たまえ」
と藤田校長は窓の下を指刺した。
眼下の校門の前には報道陣の乗る車が10数台止まっており、マイクを持ったレポーターが何名か校門の前で現場中継をしてる様子が目に飛び込んできた。
「とにかくだ、我が校始まって以来の驚愕の出来事が起こっているこの件に関して、君たちの率直な意見を聞きたいと思って今日は中居先生に連れてきてもらった次第だ」
「分りました、藤田校長先生。何でも素直にお答えします」
メーテルに似た摩耶が返事をする。
「そもそも君は一体いつそんな素晴らしい能力を身に付けたのだ?」
「それは隣の卯原さんに全て教えてもらったんです」
「そんな簡単に教えてもらってできるモノなのか?」
「はい、2週間ばかりある言葉を練習しただけで、できるようになりました」
「そうか。当然教えたと言うからには卯原さんも同じ技術を持ってるんだな?」
「当然です校長先生。私と秀と星はカタカムナ人ですのでそんな事は日常茶飯事の技術で別に不思議でもなんでもありません」
「うーむ・・・」
「ね、しびれるでしょう?校長」
中居が言葉を添えた。
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