第61話 中居先生の頼み
貧相な播磨がクラスを去ったすぐその後に日本史の中居先生が急ぎ駆け込んできた。
「おい摩耶、そしてメグたち。ちょうどよかった。みんな揃ってるな」
「どうしたんですか先生」
メグが中居に尋ねた。
「しかし朝から学校付近がいきなり騒がしくなったな。職員室でもネットで見て先生たちが大騒ぎになっているぞ」
「まあ、記念すべき摩耶はんのデビューやさかいな」
「パーっと派手にやるんだナ」
「そうか、全てを世界に公開したいのだな。しびれるね、まつたく。しかしなんでデビューはメグたちではなく、摩耶なんだ?」
「ピンポーン!いい質問ね。中居先生」
「先生、前にもゆうたけどワイらはいつの時代も黒子役に徹してまんねん」
「いつもその時代の人に主役になってもらうんだナ」
「そうなの。ちょっと面倒だけど摩耶ちゃんはカタカムナの考え方を伝える『時の人』になるの。今からは覚悟してね」
「覚悟って・・・」
摩耶が困惑した様に下を向く。
メーテルにそっくりだ。
「あ、そうそう。今朝からの報道陣やYouTubeの騒動での詳細を聞きたい、と校長先生が言っているので休み時間に校長室にぜひ来てほしい」
中居が思い出したように用件を言う。
「そらそうやな。こないに大騒ぎになってしもうたら先生たちも理由を知りたくなるわな」
「ある意味、この辺りできちんと説明するのはいいことなんだナ」
「わかりました。ちょうど私たちも前にも言ったように校長先生とはいちどゆっくり話がしたかったんです」
「確かそうだったな。俺も校長との仲介役をやる約束が伸びていた。すまん。けれども今回の騒動で向こうから話がきたってわけだ。来て説明してくれるな」
「もちろん喜んでお受けします。それとその場を借りて私からも大事な提案が一つあるからちょうどよかったです」
「そうか。じゃぁ放課後に校長室で待ってるからな。4人とも来てくれよ。頼むぞ」
「「「「わかりました」」」」
「それともう一つ個人的な頼みがある」
「なんですか?」
「なんでんねん?また改って?」
「うちの親父がどうしても君たちに会いたがっている。すまないが明日の夜、時間を取ったはくれまいか?」
「お父さんって、あの超能力で有名な中居剛三さん?」
摩耶が答えた。
「そうだ、普段から人にモノを頼まないその親父の頼みだ」
「わかりました。そちらのほうも、もうそろそろ話が来る頃だと感じていましたので心の準備はできています」
「そうか、そういう事も気配でわかるんだな。君たちは何から何まで手回しがいいな、本当に助かるよ」
「では明日の夕方で良いですか?」
「いいよ。じゃぁ学校が終わったら校長室で会うようにしよう」
「わかりました」
「じゃあ、まずは放課後、校長室で」
中居が手を振って教室を出て行った。
「いよいよでんなー」
「そうなんだナ。いよいよ世界に公開なんだナ」
「さあ摩耶ちゃん、頑張ってね。何があっても私たちが陰で支えるから心配しないでね」
「うん、わかったわ。あ、メグそれとちょっと相談いいかしら?」
「何でもどうぞ」
「ついさっき播磨先輩が来てお父さんの旅行会社を手伝ってくれって言うの。なんでも、すごくいい給与を出すからって」
「いいじゃあないの。手伝ってあげたら?」
「あなたたちのカタカムナの技術を一企業のお金儲けに使っていいの?」
「あはは、摩耶ちゃん。それは今からやる事に比べたら小さな事なのよ」
「小さなこと?」
「せや、仮に播磨はんの会社が大儲けしようと結局はみんなのお金になりまんのや」
「カタカムナの考えかたは前にも言ったように『所有の概念』がないんだナ」
「そうなの、摩耶ちゃん。まもなく世界中が『お金持ち』とか『貧乏』とかの概念から解放されるのよ」
「しやーけど、播磨先輩の『貧乏神』の概念だけは無くなりそうにおまへんな」
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