第60話 休み時間

 物理の時間が終わり休み時間になった。


 遅れて来た摩耶にクラスのみんなが群がる。


「摩耶ちゃん凄いねー」

「ワープできるんだ」

「どうやってできるようになったの?」

「玉袋もびっくりしてたね」


「みんな、ちょっと待って!マヤ・システムなんて言ってるけど全てはあの3人に教えてもらったのよ」

 教室の隅でバカ話をしているメグたち3人を指差して摩耶は言った。


「え?私たち?」

 メグが自分の顔を指差して答える。

「私たちは単なる摩耶ちゃんの偉大なる指導者」

「えっへん」と自慢の大きな胸を張るメグ。


「せや、実際摩耶はんがやってるんでマヤ・システムでええやおまへんか?」


「うん、マヤ・システム、いい名前なんだナ」


「そんな・・・メグちゃんお願い、助けてよー」


 そうこうしているとクラスのドアにネズミ男が顔を出した。

 播磨である。

 なんか鼻息が荒い、しかも貧相。


「ちょっとこっち来い」と手招きしている。

 体から放出されるマイナスオーラは完全に貧乏神をイメージさせた。


「みんなごめん、クラブの先輩が来たの」

 席を立ってドアから摩耶が出ていく。


「おい、摩耶。なんで携帯にすぐ出ないんだよ」

「播磨先輩、朝からたくさんの人からの質問攻めで大変だったの。ごめんなさい」

「まあ、いいや。かわいい後輩だから許す。とにかく俺の話を聞いてくれ」

「話ってなんですか?手短にお願いします」

「俺の親父が旅行会社をやってんの知ってるな」

「渡辺先輩から話には聞いています」

「そんなら話は早い。今日から摩耶ちゃんにはうちの従業員になってもらいたい。もちろん給料はハズむから心配しないでくれ」

「そんな急に言われても困ります。私は高校生ですよ」

「頼むよ!お前以外に相談する相手がいないんだ。それに親父にはもう話をつけてるから」

「そんな・・。一方的な話をされても。いくら先輩だからと言っても困ります。そういう話ならメグちゃんか秀くんか星くんに言ったらどうなんですか?」

「メグたちか・・・それも考えたけれどもあいつらは自己主張が強そうだからなんかやりにくいんだな」

「失礼ながら、私も自己主張ぐらいならありますけれども」

「まあそういうな、とにかく俺を助けると思って考えてくれ」


 米つきバッタのように手を合わせて哀願するネズミ男。

 まさに貧相の極みここにありだ。


「わかりました、一度メグちゃんに相談してから答えを出します」

「そうか、ありがとう!頼んだぞ!うちの会社の将来はお前の肩にかかってるからな!」

「そんな勝手なこと言わないでください」

「まあ、とにかくよろしく頼むぜ」

 言うだけ言うとねずみ男は足早に去っていった。




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