第34話 茅の輪くぐり

「はーい、ウイングバーガーセット5つでーす」マイがテーブルにトレイを置く。

「ありがとう!」


「ごゆっくりね!」


「おおきに!アミはん!」


「マイです!」


「さあ、カタカムナ質問タイムスタートよ!ジャンジャン質問してね」


「今日は貴重な経験をありがとう。しかしカタカムナ文明は本当にあったんだな・・・」質問とも確認ともとれる態度で中居が聞いた。


「そうよ正真正銘のカタカムナ人が目の前にいるじゃあないの?それとも3人じゃあ少ない?」


「いや、正直嬉しかったんだ。子供のころからカタカムナ文明のことは親父に聞いて研究していたが半信半疑だった。しかし今こうして君たちのお陰で存在が明らかになって、なんだか心の霧が晴れたようだ」


「そういえば先生はいつも学校行事の耐寒登山で、金鳥山に行ったときはまわりの先生方の嘲笑にもかかわらず、カタカムナの古代文明のことを熱く語っていたそうですね」

摩耶がフォローする。


「とにかく驚きで一杯だ。正直、今は年がらもなく興奮している。いろいろ聞きたいが、まずはなぜカタカムナ人はこの地、神戸を選んだのだ?」


「先生ワイらは昨日も言ったけんども月に住んでいるねん。最初ワイらは地球上で一番磁場が安定している土地を探したんや」メグの代わりに秀が答える。


「それが神戸の金鳥山か?」


「せや、もともと六甲山は石英の結晶である水晶がぎょうさんあったから山全体がまるでひとつの大きな水晶のようなもんやった。そのパワーは月からでも目立ってたで」


「なるほど、カタカムナ文明にとっては水晶の持つ力が大切なのね。確かに今でも水晶は占いでよく使うわね」摩耶が答える


「で、地球上で磁場の安定している金鳥山を選んだ君たちは次に何をしたんだ?」中居が先を促す


「磁場が一番安定している金鳥山と我々が住んでいる月との移動用に移送ゲートを設置したの。これは約38万Kmの遠距離を移動するのでさっき使ったお化けトンネル仕様とは違い本格的な大きなタイプよ。」


「実際に今それを経験したから君たちの言葉は全部信用する。それは一体どんな形をした装置なんだ」


「今の現代人たちも似たようなもんを使ってまんがな。用途は全く違うけんどな」


「似たようなもん?何かしら?」

摩耶が聞き返す


「茅の輪くぐりよ」

メグが答える。


「茅の輪くぐりというと、神社で行う願掛けの際の茅で作ったあの輪のことか?」

中居が尋ねた。


「知ってるわ、輪をくぐると賢くなると聞いたことがあるわ」

摩耶が捕捉する。


「そうなんだナ、ぼくの装置と形がよく似てるんだナ」


「そう、古代縄文時代の人たちは私たちの移送装置を見よう見真似で同じ形のものを作ったのよ。でも似てるのは形だけ。当然、瞬間移動はできないので今では健康促進や賢くなるようにとの祈願のための道具となっているわ」


「ようするにや、わいらの装置を模して作ったってことや」


「なるほどな。茅の輪くぐりにはそういう意味があったのか・・・これはまた勉強になったな・・・」


「ぼくらの装置は材質は違うけども茅の輪くぐりと同じような円形をしているんだナ。そして古代にぼくがメグの指示で多くの装置を日本中の神社の鳥居の中に組みこんだんだナ」


「そしてメグは日本中に行っていろいろ教えたのね」


「しかし、それなら誰でもが神社に行ったときにその装置が目に付くはずだが・・・」


「当然、移送装置は設置したあとは目に見えないように光学迷彩を施したかさかい誰も見えへんねん」


「しかし光学迷彩を施して透明にしたとはいえ鳥居の下にゲートを設置したのなら参拝に来た誰かが間違ってどこかに移送されるような事故はなかったのかな?」


「わたしが思うに多分水晶が鍵なのね」

摩耶が答えた。


「ピンポーン大当たり!流石は摩耶ちゃん。冴えてるー!」


「お化けトンネルでさっきメグが使ってたじやあない」


「よく見てたわね。でも半分だけ正解ね」


「そこはぼくが説明するんだナ。移送ゲートを使って移動する際には移動先の神社への固有の周波数を持った水晶が必要なんだナ。昔の神社の祠には各地の神社に行くためのたくさんの種類の周波数を持つ水晶が保管されていたんだナ。丁度、現代風に言うと電車の駅に各地に行く切符があるのと同じなんだナ」


「せや、しかも移送する距離が遠いほど大きな水晶が必要となるんや。遠距離移動に磁場のエネルギーを増大させなあかんからな」


「そう、外国の神社に行く時はちょうどビール瓶くらいの大きさの水晶が必要なのよね」


「しかし水晶が大きくなればなるほど弊害も起こるんだナ」


「せや、あまりにパワーが大き過ぎるよって移送する人体に影響を及ぼすんや。いわゆる我々が言うクオーツ・シンドロームやな」


「クオーツ・シンドローム・・・聞いたことが無いな・・・」


「まあ、一種の乗り物酔いみたいなもんや、水晶に弱い人はこれが結構堪えるんや」

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