第35話 銅鐸の謎
「ズズズー」とメグがコーラを飲み干した。そして胸ポケットからさきほどの小さな水晶を取り出した。
「このくらいの大きさなら全然人体に影響はないのよ。その証拠に今移送したけど気分は悪くないでしょ?」
「そうだななんとも感じない」
「私もよ」
「これが大きい水晶使うたらそうはいきまへんねん」
「そうなんだナ、ぼくは特に『水晶酔い』するタイプなんだナ」
「そう、そこで特大水晶からの強大なパワーを人体から遮蔽するために私たちは銅鐸を開発したのね」
「何?あの銅鐸か?」
「そう、現代では銅鐸の使用方法がわかってないと思うけれども実はあれはエネルギー遮蔽装置なのよ」
「銅鐸の内部にある『環』と呼ばれる金具に特大水晶をぶら下げたんだナ」
「今の学者はんは、銅鐸の用途を楽器だの祭神器具だのしよーもないこと言いよるけんど正解は人体を守る『水晶パワー遮蔽容器』やったんや」
「あ、そう言えばさっき移送してもらった渦森山でも昭和9年に道路工事中に銅鐸が出土してたわ。『渦森銅鐸』は有名よ。あれはそういう使い方だったのね!」
さすがに渦森山出身である摩耶が尋ねる。
「そうなの、あれは私が昔シュメールやエジプトなどの外国の神社に行く時に使っていた銅鐸よ。なつかしいわね。今はどこにあるのかしら」
「確か東京の国立博物館にあるって聞いたわよ」
「中居先生、三種の神器の中で銅鏡、銅矛は古墳から出土しまんねんけど唯一銅鐸だけは古墳から出土しまへんな?」
「そうだな確かに銅鐸だけは住宅の造成時などで偶然にしか見つからないからな。それはそういう理由だったのか。全くしびれるな!」
中居がまたもや感動している。
「しかもほとんどの発見場所が神社の近くの造成地か道路なんだナ」
「まあ、今でいうたら海外に行く時のパスポートみたいなもんやな。『銅鐸下げて行ってきまーす!』やな」
「今日はなんと銅鐸の謎まで解けたわね。私も銅鐸が打楽器にしてはおかしいと思ってたのよ」
「そうだな俺も表面の厚みが2-3mmなので薄過ぎるとは思っていた。あの薄さでは打ったときにきれいな音は出ないし、第一壊れやすいからすぐにへこむと思つていた」
「そう、それと下から見た形が真ん丸でなく扁平の形をしているからおかしいと思ったのよ」
「扁平の形状が水晶パワーを閉じこめる絶妙の形なんや。ホンマ、楽器とかいう今の学者はアホが多いちゅうこっちや」
「そうなんだナ、なんでもわからなければ楽器や神を祭る道具としか言わないんだナ」
「根本的に学者は発想が貧弱なのね。それと出来上がった学会に逆らえないという悪しき慣習が問題よね」
「水晶が移送の鍵で銅鐸が水晶パワーに対するカバーというのは理解した。しかしさっき卯原さんはたしか『半分正解』と言ってたな。あとの半分はいったい何だ?」
「あとは移送装置の起動方法なんだナ」
「せや、もし水晶だけで瞬間移送できるんやったらた、たまたま水晶持ってる人間が鳥居の下くぐっただけでどこ飛んで行くかわからへん。こりゃ危のうてかなんわな」
「特にこの辺りは子供たちが六甲山系に入って水晶狩りをよくやるって聞いたから尚のことね」
「水晶発信の時計を持ってる人もたくさんいる時代よね」
「つまり移送装置の起動方法が別にあるんだな?」
「そうなの、水晶の使用目的はあくまでも地下の磁場パワーの増幅と自動車のハンドル。つまり行き先を決める舵なのよ」
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