第32話 瞬間移送 1
放課後、超自然科学研究部室にて摩耶を含む4人が部室に向かって歩いている。
「今日、本当に物質移送が見れるのね!」いつもは落ち着いている摩耶がキャラに似合わずはしゃぎながらメグに聞いた。
「もちろんよ!摩耶ちゃん。この2人が頑張って昨日トンネル工事したんだから」
「完璧なんだナ」
「まかしときなはれ!」
「この2人は見た目はこのようにいい加減に見えるけども仕事だけは完璧なのよ。ねえ、あんたたち?」
笑って親指を立てる2人。
三階に到着して部室のドアを開けるメグ。
椅子に座っていたゴジラこと渡辺先輩が立ち上がって
「やー!君達、昨日は本当に勉強になった。我がチームの調査した謎を一瞬にして解いてくれた。本当に感謝するよ。しかし一体どこでその勉強したんだ?」と聞いてきた。
「だから昨日も言ったじゃないですかゴジラ先輩。私たちは本当のカタカムナ人ですって」
「でも、本当にその意見を信じてもいいくらいにあなたたちは色々なことをよく知っているわね」とパソコンから顔を上げてラスカル・堀が言った。
「この近辺のわからないことがあったら何でも聞いていいんだナ」
「せや、遠慮なく聞いてんか」
「ああ、遠慮なくそうさせてもらうよ」ゴジラが笑って言った。
そこへ中居先生が入ってきた。
「ちょっと先輩諸君、先生は今からこの3人組と摩耶さんとで出かけてくるから、来週行く再度山の外人墓地の計画を立てておいてくれ」
「はーい、わかりました」
「いってらっしゃい」聞き分けのいい先輩たちであった。
「じゃあ行こうか。君たち」
「わかりました。それでは先輩達行ってきまーす」と手を振りながらメグは中居と3人を連れてドアを出て行った。
「行くと言ってもこれから一体どこに行くんだ」と中居はメグに聞いた。
「すぐそこのお化けトンネルですよ。お時間は取らせません」階段を下りながらメグが答える。
「お化けトンネル?国道2号線の下か?」
「はいそこにこの2人が昨日、仕掛けを作っておきました」
「あそこは磁場が強いんだナ」
「先生、ビックリしたらあきまへんで!」
校門を出てグランドの横を通りお化けトンネルへ向かう5人組。グラウンドではサッカー部が練習をしていた。
「おーい、星と秀!是非わがサッカー部に入ってくれー!」
グラウンドからサッカー部顧問の田森が声をかける。
もちろん相変わらず舌足らずなので是非ではなく「でひ」の発音である。
「蹴鞠はもう興味ないんだナ」
「高校レベルは興味おまへんねん」
「そういうな。俺は絶対君たちをあきらめんからな!」
もちろん絶対ではなく「でったい」と聞こえた。
「しかし君たちはどこへ行っても人気者なんだな」感心したように中居が言った。
ほどなく5人組はお化けトンネルの入り口に立った。相変わらず昭和を醸し出すレンガ組みのレトロな作りである。
「さて、君たちこの2号線の向こうに何があるんだ?」お化けトンネルの細い階段を降りる中居が尋ねる
「向こうではありません。仕掛けはこのトンネルの途中に施してあります」後に続くメグが答える。
「ん?途中?」
「ここでーす!」トンネルの中間地点でメグが止まった。指で丁寧に壁の表面をなでている。
「星、うまく設置できたみたいね。これなら誰にも気づかれないわね」
「うん、光学迷彩を施したから目には見えないんだナ」
「ここに何か装置があるのか?」中居と摩耶も壁をなでる。
「あんたたち、両サイドの階段を見張っておいてね。誰も来ていないわね」
「こちらは大丈夫なんだナ」
「こっちも誰もおまへん」
トンネル内に通じる両側の階段の下で誰も来ていないことを確認した2人が答える。
「じゃあ行くわよ。準備はいい?あんたたち2人は留守番よろしくね!」
おもむろにメグは胸のポケットから鉛筆大の水晶を取り出した。
「先生と摩耶ちゃんはわたしの肩に触れていてね、それと今の時刻を覚えておいて」
「こうか?」と2人はメグの両方の肩に手を置いた。
「もっとぴったりと近づいて」
「こうか?」
「そう、今の時刻は?」
「5時15分だ」
「その時刻を覚えておいてね」
「わかった」
「難しいことはないわよ。そのままさっきのように普通に歩いてね。それでは渦森山にご案内!」
といいメグは持つていた水晶の先端を何もない目の前の空間に突き出した。
そのとたん3人の姿は瞬時にかき消えた。
それを見て
「完璧やな」
「移送完了なんだナ」
両サイドの階段の下で親指を立てる2人。
中居先生目線
いきなりメグの「ご案内!」の掛け声とともに歩いていると目の前のトンネルが白くなり大きな渦が現れた。その後1-2秒の間に急に明るくなって突然緑の山の中にある鳥居の下に出てきた。
標高約約300メートルほどの高台からは大都市神戸の姿が一望に俯瞰できた。
たくさんの船が出入りして、夕陽に映える神戸港が美しい。
「これは・・・」中居が唸る。
「すごいわ・・・」摩耶の声が続く
「はーい、渦森山に到着です。いかがでしたか?初の物質移送体験は?」
持つていた水晶を振りながら、明るく笑うメグに2人は尋ねる。
「ここは、たしかに渦森山。われわれの学校から直線距離で5kmは離れているぞ」
「ごめんね、今回は小さな水晶しかなかったからこんな近場しか行けないの。ここは私たちの高校の裏手にある六甲山の中腹の渦森山よ」
「私の小学校の近所ね、家もすぐそこよ。すごいわ、本当に一瞬でここまで飛んできたのね」キャラに似合わずはしゃぐ摩耶。
「飛ぶって・・・すこし表現は違うけどまあいいわ」
「しかも時間も経っていない」5:15と示したデジタル腕時計を見ながら中居が言った。
「鳥居があるということはここは神社?」摩耶が周りを見回して尋ねる。
「そうよ。ここはJR住吉駅の近くにある住吉神社の奥の宮があるところなの。昔はここのゲートを使って私は日本はもとより世界中に行ってたのよ」
メグにそう言われてあたりを見回してみると小さな祠がありその周りは巨石が散乱している。
鳥居の横には「住吉神社、奥の宮」と書いてあり三世紀に神功皇后が神社を建てた歴史が説明されていた。
「私が太古に作った日本の神社の奥の宮にはすべて同じようなゲートを配置してあるの。どう先生、これで信じてくれたかしら?」
「信じるも何も、素晴らしいの一言だ!今まで疑ってすまない。聞きたいことがいろいろあるがどれから尋ねていいものやらわからない」
「でもなぜスタート地点がうちの学校の近くのお化けトンネルからなの?」と摩耶が聞く。
「ああ、今回はお二人の実験用に星に言って急遽作らせたのよ。古代にはあそこにはトンネルもゲートもなかったわ」
「少し質問してもいいか?君たちの作った装置とやらで簡単にここまで来れたようだが物質移動の原理は一体どうなっているんだ?」
「その土地にある磁場の利用と水晶発信による着地点制御よ。むかーし教えたはずよ」
笑いながらメグが答えた。
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