第29話 閑話休題 八咫烏

「あの少し質問していいですか」小さい手が挙がった。ラスカル・堀である。


「質問どんどん受け付けるんだナ」


「あの、さっきの話の中で八咫烏ってのがありましたよね。あれは調べたら神武天皇が九州から大和への東征の時に道しるべになったカラスと聞きましたが、本当にあんな三本足のカラスがいたのでしょうか?」


「たしかに、そもそも三本足って生物的に不自然だよな」

新谷が光りながら答える。


「俺は風呂場で三本足とよく言われるぞ!」股間を指さしてゴジラが笑った。


「もう、渡辺部長。品格のないことは言わないでください」

ラスカル・堀が顔を赤らめる。


「その答えは私と星がよく知ってるわよ」

メグが疲れから立ち直ったかのように笑いかける。


「そうなんだナ。あれは昔、僕が作った輸送用のドローンなんだナ」


「「「「ドローン?」」」」

部員全員でハモった。


「そうなんだナ。実はドローンなんだナ」


「2600年以上前に、ドローンがあったのか?」

ゴジラが大きな口をさらに大きく開けて尋ねる。


「こっからはワイが説明するわな」

秀が出て来てホワイトボードの前に立つ。


「急務!天皇政権の樹立!」

とペンで書いた。


「2600年前の日本は、各地で豪族たちが群雄割拠してまとまりのない時代やってん」


「そうだな神話でもそのように書いてあるが、それをまとめたのが神武天皇ではないのか」

専門なので急に中居が身を乗り出してきた。


「せや、カタカムナは科学を教えてはいたけんど肝心な天皇家の紋章『菊の御紋』の真ん中を示す政権があらへんかったんや」


「だから急遽、中央集権国家が必要になったと」


「せや、しやーけどあの神武天皇はんの進軍の遅いこと!軍事物資や食料の運搬があかんかったんやな」


「まぁ当時の道路事情を考えると無理もないと思えるが・・・」中居がなぜか太古の昔の神武天皇の肩を持つ。


「いずれにしてもはよ政権を固めて欲しかったんで兵站の部分をやってやったんや」


「それでドローンか?」


「せや、ほんでまた神武天皇はんは、よう道に迷いよるねん。しやーから迷わんように偵察用のドローンも用意しましたんや、こいつに頼んでな」

誇らしそうに星の肩を叩く秀。


「中居先生、先日カタカムナ人は、天皇家の祖先の天孫族と戦って滅亡したと言いましたが戦うどころか私たちは手助けをしてやったんですよ。これが史実」

メグが捕捉する。


「ドローンの下から生えた三本のアームでぎようさんの荷物を運んだんや。それを見て『三本足のカラス』やと思たんやろな」


「あの・・・なんでカラスに見えたんですか?」また小さな手が挙がった。


「ああ、あれはメグはんが『機械剥き出しは可愛くないからカラスの格好にして』言いましたさかいにそういうデザインにしましたんや。ようはこの人のわ・が・ま・ま」

とメグを指さす秀。


「そうなんだナ、僕は戦闘時だから勇ましいザク型を提案したんだけど瞬殺でメグに却下されたんだナ。それで急遽忙しいのにカラスの型を作らされたんだナ」

メグを恨めしそうに指さす星。


「ちょっと何よあんたたち!『カラスも結構いいですね!』って同意したじやあないの!」


「まあまあ、2600年前の喧嘩はさておき、弓弦羽神社の八咫烏はどう説明するのかな?」中居が両手で3人を制しながら先を促した。


「ああ、これは時代はもっと進んでメグはんが神功皇后はんをやった時のことや」


「あの時は、旦那の仲哀天皇が早く亡くなったから本当に準備不足で大変だったの。私は本当は専業主婦を狙っていたのに・・・」


「しやーから、ワイが参謀役の武内宿禰はんやって政治と軍事をサポートしましたやんか」


「あの時はわざわざ遠征で韓国まで行ったんだナ」


「しかもあん時はメグはんたしか妊娠してたんやな」


「そう、つわりがひどくてもう大変だったわ。そもそもここの御影の地名は韓国まで行く途中に私が化粧する際に泉に姿を映したから着いた名前なのよ」


「あ、あの阪神御影駅の中にある『沢の井』の泉ね」摩耶が捕捉する。


「もしメグが化粧してなかったら、ここは多分別の地名になってたんだナ」


「まあ、そういうこっちゃな。いずれにせよ韓国から御影まで帰って来たメグは裏切りに会うんや」


「忍熊王(おしくまおう)なんだナ」


「せや、あいつは悪いやっちゃ!メグはんは磁場が一番強いここに急遽神社を作ったんや。せやから建設資材の運搬にまたまたドローンの活躍や」


「それがまたカラス型?」摩耶が尋ねる。


「そうなの。たくさんのドローンを総動員して資材運搬をして急がして出来上がった神社が弓弦羽神社なの。私が戦勝祈願のために弓と矢と甲冑を収めたから弓弦羽神社という名前になったのよ。その後は頭にきたから忍熊王は瞬殺にしてやったけどね」

ペロッと舌を出すメグ。


まだまだ続く3人の途方もない話に、どこまで信じていいのかわからない超自然科学研究部員たちであった。

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