第28話 大富豪の謎

「まずは大まかな説明を私の方からするわ。後は専門的なところはあんたたち頼んだわよ」

とめぐは立ち上がってネズミ男からペンをとりホワイトボードに向かった。


「まずこの私たちのいる神戸の東灘区と言う場所の地形から説明するわね」そういうとホワイトボードに六甲山を描いた。そしてその両側と真ん中に青いペンで3つの川を描いた。


「 1番東側の川、わかる人?」


ラスカルが小さな手を挙げる。

「芦屋川ね」


「正確!じゃぁ1番西側の川わかる人?」


「石屋川だな」ゴジラが答える。


「最後真ん中の川は?」


「住吉川です」とネズミ男。


「社会科で習ったと思うけどこういう山の傾斜に沿って川が流れて堆積した土地のことを何と言う?」


摩耶が手を挙げた

「扇状地ね」


「そう、扇の形に土地が広がるからついた名前ね。それと六甲山は昔から石英の結晶である水晶がよく取れるところね」


「住吉川の上流に水晶谷って言うところがあるよ、よく子供の頃に水晶狩りに行ったことがある」新谷が光りながら言う。


「だから石英や水晶が入った御影石がよく取れるの。御影石自体、この場所の地名を使っているし、さっき言った石屋川も昔は石屋さんがたくさんあったから川の名前になったのよ」


「それはよく知ってるよ、石屋川はうちの高校のすぐ隣だから」ゴジラが答える。


「そう、要するにこの住吉町っていう場所は石屋川と住吉川の2つの川の扇状地ね。つまり二つの川の堆積物が集まってできている場所なの」


「なるほどな、そういうことか」ネズミ男が納得する。


「で、その2つの川の上流に水晶をたくさん含んだ御影石があったとしたらどうなる?」


「川は長い時間をかけて大きな石を砕いて小石にして最後には砂粒にします」ラスカルが手を挙げて答えた。小さな手だ。


「そうよ、だから当然この水晶の原石を含んだ細かい砂がこの両方の川の底に貯まり、堆積して扇状地を形成したの。つまりここは水晶の粒でできた扇状地ね」


「「「なるほど」」」


「星、疲れたわ。ちょっと変わって。」


「了解なんだナ、僕たちが月から見て世界中で1番パワーを感じたのは大きな三角形が二つ見えたからなんだナ。三角形は扇状地の形なんだナ」


「じゃぁ私たちは月から見ても目立つ位のパワースポットに今住んでるの?」


「そうなるんだナ、 そして2つの三角形が交わるところが弓弦羽神社なんだナ。今も羽生選手のスケートファンたちがたくさん全国から集まってるんだナ」


「スポーツといえば御影は日本サッカー発祥の地としても有名です」ネズミ男が言った。


「そうね、弓弦羽神社のシンボル八咫烏と日本サッカー協会のシンボルは同じよね」ラスカル。


「昔、御影師範高校が日本で一番サッカーが強かったこともあるしな」ゴジラ。


「そうそう高校サッカーで十回以上優勝した経験のある唯一のチームだもんな」光る新谷。


サッカーネタになって部室内が盛り上がる。


「おそらく最初の朝日新聞社の社長村山氏はこのことに気づいていた思うんだナ。もう一つさらそのパワーを大きくするために球体の水晶が必要なことを知っていたんだナ」


「あ、そういえば松寿電器の社長は直径1メートルの水晶玉を芦屋の自宅に持っていたと聞いたことあるわ」摩耶が反応した。


「水晶玉の直径が大きければ大きいほど地面からのパワーの増幅に役に立つんだナ」


「星価学会の会長さんも大きな水晶を持っているそうよ」ネットを見てラスカルが答えた。


「さっき誰かが言ってた住吉倶楽部と言う富豪クラブの存在があったとしたらそこでこの法則を知った人間が知人に情報を渡したとしてもおかしくないんだナ」


「そうか、だから次から次へその情報を聞いた富豪たちが短期間にこの土地に集まってきたんだな。ようやくわかった」ゴジラがギョロ目で唸った。やはり怖い。


「よかったな渡辺くん、新谷くん、播磨くん君たちの一年間の調査の成果が卯原さんチームのおかげで実ったな」中居がチーム・ゴジラを労う。


「お安い御用なんたナ」

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