第25話 カタカムナウタヒの解釈

「あのー、もう一つカタカムナについての質問いいですか?」

先程の堀がゆっくりと手をあげた。

可愛らしさ顔と小さな手をモジモジしてる仕草が「アライグマ・ラスカル」にそっくりである。


「何度でもどうぞ」

もう完全に先生と生徒の関係である。

とても新入生と先輩の会話ではない。


「中居先生と勉強していたカタカムナウタヒについて詳しく教えてもらえませんか?」


「いいわよ。でもウタヒをよく知ってたわね。とても嬉しいわ!」


堀は引き出しから大きな紙を持ってきて、ホワイトボードに貼り付けた。

そこにはカタカナで書いた意味不明の歌が書かれてあった。


「これが楢崎氏が金鳥山で平十字から借りた巻物を、長い時間をかけて写した内容だ」

と中居が捕捉する。



ヒフミヨイ マワリテメクル ムナヤコト 


アウノスヘシレ カタチサキ


ソラニモロケセ ユエヌオヲ 


ハエツヰネホン カタカムナ


「じゃあ説明するわよ、堀先輩はカタカムナの研究をどのくらいやってるんですか?」


「中学の時からなのでまだ3年位かな」


「分りました。じゃぁ、ある程度カタカムナの専門用語が出ても大丈夫ですね」


「はい多分大丈夫です。お願いします」

小さな手でノートを準備するラスカル堀。


「まずは『ヒフミヨイ』ね。これは簡単よね。数字の12345 ね」


「はい、これはわかります」


「次の『マワリテメグル』は大自然の中の循環を現しているのよ。漢字で書くと『回りて巡る』ね」


「はい、漢字で書くととても分かりやすいです」


「次は『ムナヤコト』は数字の678910ね。意味は先の12345と合わせて宇宙には10次元までの世界があると言っててるの」


「10次元ですか?現在私たちの世界は3次元ですよね。とても想像できません」


「そう、今の世界はそこに時間軸を入れるから4次元までは、みんな理解できるよね。5次元世界から精神世界に入っていくので頑張って上を目指そうという意味ね」


「はい・・・何となく分かります」

筆記しながら、ラスカルが何度もうなずく。


「次は『アウノスヘシレ』は漢字で書くと『会うの術知れ』つまり、一対のモノ例えばコインの裏表が会う方法を知りなさいということね」


「カタカムナは、全てのものがペアと考えているから一対になる方法ないしは、その裏の存在を知りなさいということか」

腕を組んで聞いていた中居が感慨に浸って言った。


「次は『カタチサキ』ね。これは『形先』で、つまり目に見えるものが先ということね」


「いわゆる顕在世界のことですね」


「はい、次。『ソラニモロケセ』は『空に諸消せ』で磁場を使った瞬間移動を言っているの、これは本当に空に消えるようなかつてあった移動方法なの」


「なるほど『モロケセ』とはそういう意味だったのか」

またもや中居がつぶやく。


「次、『ユエヌオヲ』は漢字で『結えぬ尾を』ね。これは少し難しいけど・・・はい、これ分かる人!」


「こればかりは私も難解で解読できなかったんだ」

中居が降参する。


「摩耶ちゃんはどう?」


「尾が結べない・・・何かしら」


「ヒントはあなたの今住んでるところ」


「私の住んでるところ、渦森山・・・」


突然ガラっとドアが開いた。

ドンドン内の作業が終わった秀と星が入って来た。


「螺旋でんがな、摩耶はん!グルグル渦巻、つまり渦や」


「クルクル巻いた尻尾は結べないんだナ」


「あら、あんたたち。ご苦労様。トンネル内の設置作業は無事終わったの?」


「完璧なんだナ」


「テスト移送も終わったさかい、バッチリでんがな」


大きなカバンを抱えた2人が入ってきて摩耶の後ろに腰かけた。


「そうか『結えぬ尾』とは渦の意味だったのか・・・」

長年の疑問が解けたのか、もう唸るしかない中居。


「せやねん、この宇宙の真理はスパイラル。つまり渦やねん」

「DNAも螺旋なんだナ。それにカタカムナウタヒ自体も螺旋状に書いてあるんだナ」



「はい、次は『ハエツイネホン』ね。漢字は『初え終い根本』ね。ゴジラ先輩これわかる?」


「初めと終わりだから、ここでもまたペアの登場だな。つまり一対が基本ということか?」


「ピンポーン!大正解です」


「今たしかゴジラ先輩って言ったんだナ」


「ああ、いつの間にか仲良うなっとるな。さすがでんな」


「さあ、ラストよ!『カタカムナ』これは3つに分けて考えるのよ。『カタ』は物質、『カム』は精神とこれもペアを意味するのよね。


最後の『ナ』は統合っていう意味ね、以上!」

笑いながらペコリとお辞儀するメグ。


「パチパチパチ」

と感激した中居が拍手した。


「卯原さん素晴らしいわ!今までのわからなかった謎が全て解決したわ!」

ラスカル堀が小さな手を叩いて興奮モードに入っている。


「いやー、しびれるね!全く。しかし凄い研究成果だな。まるで君たちが本当のカタカムナ人に思えてきた」


「えー!先生、まだ認めてくれないんですか?何度も言いますが私たちはれっきとしたカタカムナ人よ!その証拠に、約束どおり明日はもっとビックリさせますよ」


と親指を立てるメグ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る