第14話 超自然科学研究部 1
「で、どうだった星?お化けトンネルの内部は?」
「あー、磁場は安定してるから思ったより簡単にできるんだナ。1番簡易型のユニットを使えばすぐにでも設置できるんだな」
「せやろ?やっぱり思った通りや」
「じゃあ、早速明日にでもゲートを作っておいてね」
「わかったんだナ。明日中には完成させておくんだナ」
「ほな、わいも手伝うで」
※
3人は新館校舎の3階までの階段を上がり「超自然科学研究部室」と書いてある部屋の前に着いた。
「ここでんなー!ほなあけまっせ」
「ガラガラガラ」
秀がドアを開けるとシーンとした室内には、まだ誰もきてないのか彼らが一番乗りであった。
部室の壁には一面中にUFOや目の大きい宇宙人、雪男やネッシーであろうか大型の水棲恐竜の写真が張ってある。
周りを囲む本棚には
「心霊」「超古代文明」「空飛ぶ円盤」「超能力」「都市伝説」「異次元世界」「ミステリーサークル」などの文字が書いた本がずらりと並ぶ。
「しかしえらい数の本なんだナ」
「まともな人間が見たらアホみたいに思う部屋やな」
「ほんとね。でもこのミステリー、全部私たちが説明できるけどね」
指で本の題名をなぞるメグ。
感心して本棚を眺めている3人は、背後でドアの閉まる音がして摩耶が入ってくるのを確認した。
「あら、あななたち早かったのね。そんなに食い入るように本を見て、本当は興味あるんじゃあないの?」
「あ、摩耶ちゃん!約束どおり見学に来たわよ!」
「いや興味というより、我々が授けた科学でも21世紀の現代にまだ解けていないのがこれだけの数あるのかと、ちょっとがっかりしていたところなんだナ」
「せやな、こんだけ科学が発達してる割に謎が多すぎへんか?」
「『我々が授けた』ってまた発想が面白いわね。でも謎はそのまま謎でおいとくほうがロマンがあっていいこともあるのよ」
「ほえー、そんなもんでっか?」
会話の途中で本をたくさん抱えた中居先生が入ってきた。
「よう、君たちか。君たちのことは職員室でも有名になってるよ。成績は優秀で変わった3人組といういい評価だ。摩耶君もいい人材引っ張ってくれてきてありがとう」
「ありがとうございます。でも私たち3人の中居先生に対する評価もおおむねいい評価よ」
「せやな」
「同意なんだナ」
「『おおむね』っていうところが少し引っかかったけどまあいいか。ありがとう」
「あれ?先生、今日他の先輩たちは?」
「ああ。今2-3年の先輩たちは六甲山系の西宮にある夫婦岩と言うところに行っているんだ。なんでもここでは夜中に『牛女を見た』とか『超高速で走る老女を見た』などの数々の心霊現象が見られると言う有名なところだ」
「へー、そうなんですか。『超高速で走る老女』って興味ありです。私も行きたかったわー」
「来週は再度山(ふたたびさん)の外人墓地に行くらしいから一緒に行ったらいいよ。あそこは外人の女の子の幽霊の目撃談が多数あるところだ。うちのクラブは現地調査のフィールドワーク半分、机の上の討議、レポート作成が半分なんだ」
「はいわかりました!私はいわゆる『見える体質』なんでそういうのが興味あります!」
「そうか、摩耶君は見える体質なのか。また先輩たちにもいろいろ体験談を聞かせてやって欲しいものだな。それより君たちは全員入部希望なのか?」
「はい!見学に来たつもりだったけど今決めました!入部します!」
高らかにメグが宣言する。
「わいもいっしょや。入部しまっせ」
「ぼくもなんだナ」
「たしか卯原さんと保倉くんと和泉君か、いいメンバーだ。摩耶さんも含めて全員歓迎する。ようこそ超自然科学研究部へ!」
「はい!よろしくお願いします」と語尾の揃わない4人が答えた。
「先生、ところで六甲山ってそんなに怪奇現象が多いんですか?」
摩耶が尋ねた。
「そうなんだ。牛女だけではなく、六甲山系にはUFOの目撃談や心霊スポットが数多くあるんだ。実は先生も昔、UFO を何回か見たことがある。それを調査そしてレポートするのが我がクラブの主な目的だ」
「摩耶、カタカムナも六甲山よ!」
メグが摩耶に言った。
「そうなんだナ」
「お、そういえば君たちカタカムナをよく知っているみたいだな。うれしいね」
「先生こそ学生の時からカタカムナ研究をされていたんでしょ?」
「ああ、机の上の勉強だけでなく実際に金鳥山まで何回も登山して実地調査もよくやったものだ。なんと言っても金鳥山はここから近いからね。まあ立ち話もなんだからみんな椅子に座ってくれ」
中居に促されて椅子に腰掛ける4人。
「先生、私は幽霊や心霊は詳しいけどカタカムナに関してはよくわかりません」
「そうか、では今日は入部初日ということでまずは先生の得意なカタカムナについてみんなに説明しよう」
持ってきた本を本棚に入れながら中居が言った。
「はい!私にもレクチャーしてください!間違っていたら『修正』しまーす」
「これは、おもろなってきたがな」
「どのくらい先生がカタカムナを知ってるか楽しみなんだナ」
「『修正』ってのが少し引っかかるが、まあいいか。ではまずカタカムナがこの世に知られるようになったいきさつからはじめる」
ホワイトボードに向かってペンを取る中居。
ノートを準備する摩耶。
「まずは全てはこの人物からはじまった」
ペンを走らす中居。
「楢崎皐月(ならさきこうげつ)」と大きい字を書いた。
「まずは太平洋戦争が終わった直後、この楢崎皐月という物理学者が神戸・六甲山に地質と磁場の調査のために来たんだ」
「何でこの広い日本の中で六甲山を選んだのですか」
摩耶が当然の疑問をぶつけた。
「彼は地中の電磁波の測定で日本中を調査したんだ。六甲山はその中のひとつだ。そして調査中にある人物と出会う」
と言いながら今度は違う人名をボードに書いた。
「平十字(ひらとうじ)」
そして以下のようなカタカムナの発見についての経緯を4人に語った。
1949年に物理学者の楢崎は星製薬という会社からの資金援助を受けて「重畳波研究所」という研究室を設立した。
そして六甲山系の金鳥山付近で2ヶ月間にわたる大地電気測定の研究を行っていたとき、猟師の姿をした平十字(ひらとうじ)という人物に出会った。
そしてこの猟師から楢崎が調査用に地面に設置した機材についての苦情を受けた。
苦情の内容は
「山に住む生き物たちがこの測定器のためにこのあたりを通れないから」
という奇妙な理由であった。
しかし楢崎がこの奇妙な苦情に素直に応じて、直ちに機器を取りはずすと平十字から感謝され、お礼の代わりに、平十字の父親が宮司をしていたカタカムナという神社のご神体であった巻物の書写を許されたという。
そこに記された文字は線と丸の組み合わせで螺旋状に配置されていた。
これが今に伝わるカタカムナ文献である。
平十字は太古の大昔にこの六甲山系の金鳥山では文字と高度な文明を持った種族がいたことを伝えた。
この言葉に楢崎はピンときたことがあった。
彼は戦争中、満州に製鉄技術の軍属として行ったおりに蘆有三(ロウサン)という中国の僧侶から
「日本には超古代に宇宙の真理を解明し、現代の文明よりも高度の文明を持っていた種族がいた」
という言葉を思い出し、このカタカムナ文献こそがその文明があった証拠だと思った。
この彼の直感がなければ、カタカムナ文献は闇の中のままであったであろう。
「さすが、中居先生。よく勉強してるわね」
「だいたい会ってるんだナ」
「平十字はワイがやったんやけどな」
「え、秀、あんた平十字やったの?」
「ああ、一瞬のチョイ役やったけどな」
「で、『山に住む生き物たちがこの測定器のためにこのあたりを通れないから』って本当に言ったの?」
「ああ、ほかに適当な理由がなかったさかいな」
「でも地中の電磁波測定って何のためにしたんですか?」
摩耶が手を挙げて質問する。
「そうだな、地中の電磁波によって農業に適した場所とそうでない場所を確定するためなんだ」
「はい!そこは私が補足しまーす!」
「お、卯原さん。さすがに頼もしいな」
「まずはこの概念を覚えて!」
とメグは立ち上がってペンをとりボードに書いた。
「イヤシロチ(弥盛地)、ケガレチ(気枯地)」
「摩耶ちゃん。地球上の土地はまずその地中の電磁波の強度によってこの二つに分けられるのよ。なんとなく気分がいい地をイヤシロチ、そして運気がない場所をケガレチと呼んで縄文人は区別したの」
「そうなんだナ、楢崎氏は鉄を溶かす溶鉱炉で同じ素材、同じ溶鉱炉なのに、ある場所ではいい鉄ができるのにある場所では悪い鉄ができた経験から、なぜ土地によって製品が不揃いなのかを考えたんだナ」
「せや、楢崎はんは戦争時には軍の命令で満州の各地に溶鉱炉を作って製鉄をしてたんや」
「いやー、君たちよく知ってるな。驚いたよ、そのとおりだ」
中居が感心しながら3人の解説を褒めた。
「カキーン、カキーン」校庭から野球部の打球音が聞こえている。
まだまだカタカムナ講義は続くのであった。
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