第13話 放課後


「フアー、やっと授業終わったー」


「疲れたー」


「死ぬー」

初日の授業がすべて終わった


帰り支度をしているメグの周りに「ピー子」こと坂本を含む女生徒たちが集まってきた。


「ねえ、メグ。さっき大江田先生が言ってた『ありがとう』って言霊(ことだま)ではどういう意味なの?」


「あ、興味あるの?」


「ええ、せっかく10回唱えるのなら意味を知ってたほうがいいでしょ?」


「そうね。じゃあ真剣に教えるわね」


さっと立ち上がって黒板に向かうメグ。

「まずはありがとうの『あ』ね。『あ』には生命という意味があるの」

さらさらと板書するメグ。


「次に『り』ね。『り』には離れると言う意味があるの。人間は生まれたときお母さんから生命が離れるわよね。」


「うんうん」


「『が』はまず『か』で考えてね。『か』にはパワーという意味が込められているの。しかも濁点がついてるでしょ?濁点にはその意味をさらに強調する機能があるの。だから意味はとても大きなパワーね」


「ふんふん」と頷きながらメモをとる女生徒たち。


「『と』は統一ね、最後の『う』はさっき大江田先生も言ってたけど『生まれ出る』と言う意味」


「そうすると『ありがとう』全部の意味は?」


「『この世に生を受ける。とても強大な力が一つになって放出される』かな。この長い文章がたった『ありがとう』の五文字に凝縮されているのよ」


「へー知らなかったわ」


「今まで『有難い』という意味としか知らずに使っていたわ」


「だから明日から毎朝、起きたらちゃんと意味を意識して『ありがとう』を10回言ってね、パワーが寄ってくるわよ!」


「うん、わかったありがとう」


「あ、ピー子。今の『ありがとう』って意味考えて言った?」


「あ、早速忘れてた」

首を引っ込めて舌を出す坂本。

本当に仕草が小動物のようだ。


「ありがとねー!」


「じゃあねー!」


かばんを下げて教室を出て行く女生徒の一群。


「なんや、みんな言霊(ことだま)に興味持ったみたいやな」


「そうね、いいことよ!」


「せやな」


「それより秀、さっき行ったお化けトンネルって例のものに使えない?磁場もいいしちょうどいい大きさよ」


「ああ、ワイも気付いてたんや。跳躍ゲート用にやろ?」


「ピンポーン!」


「星に言ってトンネルの中間地点に跳躍ゲートを埋め込んで欲しいの」


「了解や、あれだけ磁場があれば楽勝やな。まあ星にとっては簡単な作業やろな。近距離用タイプの簡易型やったら一日もあったらすぐにやりよるやろ」


「あれ?そう言えば星は?」


「ああ、あいつも同じ考えや。もうお化けトンネルに行って設置の調査しとるとこや」


「あら、行動が素早いのね」


「まあな、長い付き合いやよってあんさんの考えはわかるさかいにな」


「あ、そろそろ超自然科学研究部に顔を出さなきゃ、摩耶ちやんとの約束よ」


「ほんまや、ほなワイがトンネルに行ってきて星を連れてくるわな」


その後3人は合流して新館3階の超自然科学研究部に向かうのであった。

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