第195話 飛ばし 1
これに関しては俺は、正直書こうか書くまいか最後まで悩んだ。
なぜなら俺が1番、証券会社を辞めようと決めた理由でもあるからだ。
「飛ばし」
この言葉は1998年に一躍有名になってしまった。それは大手証券会社の社長が泣きながら「社員は悪くありません」と記者会見したことによって国民の目にさらされてしまったからである。
この当時俺は証券会社を既に辞めていたが、テレビの記者会見を見て「当たり前だ社員は全く悪くない、悪いのはお前たちのようなクズなトップ連中だ」と俺は思った。
いつかは露見するとわかっていたので、俺は正直「やっと表沙汰になったか。これを見越して辞めて良かった」というのが正直な気持ちであった。
「飛ばし」の説明に入る。
「飛ばし」とは証券会社が保有する有価証券などが値下がりして損失が出た際、社外のファンドや子会社などに、含み損を抱えたままの実態よりも高い価格で一時的に売り渡す手法である。
要するに「ババぬきゲームのババ」を子会社に回すわけである。
これをすることによって証券会社本体は損失を出さずに済み、損を社外に「飛ばす」ことから名付けられた。
全く「とんでもない方法」を思いついたものである。
証券会社は決算で損失が表面化するのを避けるため、決算期をまたいでの「飛ばし」が多かった。
バブル崩壊後の1990年代前半に相次いで表面化して問題となった。まあ粉飾決算の一種とも言える。
発覚した後は新法ができて、現在は証券取引法で禁じられている。
「飛ばし」の基本は理解したと思うので事件の詳細を書いておく。
1998年3月4日、山一証券の経営破綻を招いた約2700億円の債務隠し事件で、商法違反などに問われた前会長・行平次雄ら3人が東京地検特捜部に逮捕され、同年9月16日、東京地裁で初公判が開かれた。
同証券は、事業法人から直接資金を預かり、一任勘定で運用するなど、いわゆる「ファンド」営業を展開していたが、株式相場の急落以降、膨大な損失を抱え込んだ。
行平被告らは、この巨額の含み損を「顧客企業との取引で評価損を生じた場合、決算で損失が表面化しないよう決算期の異なる企業間で含み損のある有価証券を転売する=飛ばし」方式で粉飾決算を重ね、約3500億円の簿外債務を発生させ会社を破綻に追い込んだ責任を追及された。
この山一証券破綻の核心である「飛ばし処理」について、大蔵省の証券局ぐるみの指導・助言があったとの疑惑がある。
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