第193話 NTT株登場
ここらでバブルの代名詞ともなったNTT株のことを詳しく書きたいと思う。
先程のシンデレラ・ガールほどの破壊的な高配当ではないが、一般庶民が幅広く利益を得たと言う意味では一番バブル時代を象徴する株であろう。
NTTとは上場前の名称で、以前は「日本電信電話公社」と言っていた。
すなわち公社なので国の一機関であったわけである。
昨今は郵貯にしてもJRにしても、かつては国営だった株式がどんどん上場しているからあまり珍しくはないが、当時は国の所有物が初めて民間になりそして上場すると言うことで非常に世間の注目を集めた。
NTT株の所有者は大蔵大臣であった。
つまり大蔵大臣所有のNTT株式を1株単位で国民に売却しようっていうのがこの物語のスタートである。
以前どこかでも話したと思うが、日本国民であれば誰でもが入札に参加できた。
1986年、11月 当初の入札金額は119万7000円であった。
つまりこの金額を払い込める人間は、誰でも入札に参加できたのである。
俺は当時入社1年目にこのイベントに立ち会ったのであるが、自分の全ての顧客はこの入札に参加した。
それどころか、家族や親戚の名前まで借りて入札に応募したので倍率は膨れ上がり最終では5倍ぐらいになっていたと思う。
しかし抽選発表がなされた後、家族全員が当選した人は全ての株が買えないと判断して中には拒否する人間も出てきた。
で俺たち証券会社では拒否した人間の株を集めて、さらに欲しいお客さんに回したりそれでも余った場合は我々証券マンが買い取った。
そのシステムにより俺は入社1年目であったが3株を買った。
当然その資金は全くなかったのであるが、支店の隣にあった協和銀行が「NTT株を買うのであれば無審査で金を貸します」と言う話が来たのである。
すなわち大学を出たての何の信用もない俺に無担保でポンと入金してくれたのであった。
まぁ無茶苦茶な時代だ。
同様にすべての証券会社の社員やレディーさんなど社内のほとんどの人間がNTT株を所有していたことになる。
そして我々がめでたく株主となった3ヶ月後、1987年2月9日に待ちに待った上場となる。
初日は値段がつかなかった。
株式ボードに新たに加わった「9432 日電電」と書かれた欄に数字が9時の寄り付きから一向に値段がつかない。
エレベーターの上行きを示す「↑」のマークがあるだけだ。
このマークは「買い気配」と言って売りが無くて買いだけが殺到していることを示す。
結局この日は全く売り物がなくて値段が付かずに終わった。この日のテレビのニュースは「買い」が殺到して値段が付かずに終わったNTT株のことで一色であった。
翌日、2月10日 11時前に初めてボードに「160万円」と言う値段が表示された。
支店内では「おー!値段がついたぞ、」と言う声とともに拍手が起こった。
その後もどんどん買いが継続して
3月4日には株価は300万円に到達。
4月22日には、上場来の高値となる318万円を記録したのだ。
もしここでうまく売った人は一株で200万円の利益を半年で出した事になった。
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