第162話 即死作戦 終結
結論から言えば、ほんとうに清田さんが言うように「即死させたる」であった。
いや、まるで映画のワンシーンを見るようであった。
今のようにスマホがあれば、一部始終を録画したかったのだが惜しい事をした。
やつらは、どうやら親分である「吉本」と言う言葉に過剰に反応した。
「見たところお前が兄貴分やな。はよ吉本に電話せんかい!」
しかし和也は一向に電話しようとしない。
どうやら親分に今回の話を通してないような感じが、素人の俺でもわかった。
「何ボーっとしよるんや!はよさっさと電話せんかい!」
和也の頭を無遠慮にしばく清田さん。
しかし微動だにしない和也。
「わかった。ワレが電話をせえへんのやったらワシがかけたるわ。知らんぞどんどん高うつくぞ!」
と言って清田さんは自分の携帯電話で吉本とやらに電話をかけ始めた。
慌てる和也と愉快な仲間たち。
「おう!吉本か?お前のところの若い奴らがワシの大事な素人相手にイタズラしよるぞ!知っとんのか?」
本当に電話の相手は吉本なのか?
一人芝居じゃあないのか?
俺はまだ疑って聞いていた。
「誰やと?知らんわいこんなアホなチンピラ!おい、お前!名前なんや!」
「な、中本和也です」
耳を引っ張られた和也が急に敬語になった。
「なんや、中本和也言うてるで!生意気にチンピラのくせにわしの正座命令を拒否してるんや。どんな教育しとんのや?電話かわろか?」
和也が片手を振って「いやいや」と拒否のポーズしている。
どうやら本物の吉本と話してるようだ。
ホッとした。
「めんどくさい奴やな!吉本、お前から話さんかい!」
強引に電話を和也に押し付ける清田さん。
「いや、あの・・・弟のビジネスを手伝って・・・いえ決して・・・後で報告しようと」
なんか急に直立不動の姿勢になり、ペコペコ言い訳をしている和也。
「はあ・・・土下座ですか?はい、清田さんから言われました。わかりました、すぐやります」
片手でチンピラたちにすぐに土下座しろと床を指差す和也。
不承不承慌てて正座するチンピラたち。
しかし中本だけはヤクザではないからまだ渋っている
「兄貴。こんな奴ら、はよいてまえや!何やってるんや?」
「あかん、次元が違うわ。お前もはよ正座せんかい」
「あほくさ。ワシはヤクザやないから絶対に正座はせん!」
まだ虚勢を張る中本。
「あかんて、お前!えらいことになるぞ!」
正座しながら弟を、諭す和也。
言うことを聞かない弟の図式。
「おう、電話かわれ」
正座する和也たちを順番にしばきながら電話を奪う清田さん。
カッコいい!
「こら、吉本。今回のは高うつくさかいにな、覚えとけよ」
と電話を切った。
ここまでかかった時間は約5分。
即死と言ってもいい。
「さてと、吉本には後で焼き入れるとして、ワレはカタギや言うたな」
正座しない中本に詰め寄る清田さん。
「か、カタギに暴力ですか?」
中本が抵抗する。
「あかんて!謝れ!」
と必死に手で合図する和也。
ゆっくり手袋を外す清田さん。
まともな指は2本しかない。
「中本、勝ちたいならグーを出せ!」
と俺は心の中で応援した。
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