第151話 新聞発表
奴らの田主社長の心を射止める大作戦が展開された。
まあ、奴らには「潤沢な軍資金」があるからできたことではあるが。
中本と毎晩飲み歩きをし始めて、10日くらい経ったころ
「太田さん、実は明日新聞で重大発表があります」
と言っきた。
「重大発表?」
「まあ、期待していてください」
翌日
大阪のあるスポーツ新聞に「ベット・ヨーロッパ社」の記事が大きく掲載されたのだ。
新聞の見出しには大きく
「ロンドンのベッテング会社、ついに日本初上陸!」
とあった。
当然、田主社長から速攻で電話がかかる。
「太田はん、今朝のスポーツ新聞見ましたか?」
「はい、見ました。『ベット・ヨーロッパ社』が大きく出てましたね」
冷静に答える俺。
「はよ、彼らと契約しましょうや。中本はんから『契約が伸びたら他に話を持って行きますよ』とさっき催促の電話がありましたねん」
「まぁまぁ社長、所詮はスポーツ新聞ですから金次第で面白い話題は記事にしてくれます」
「はー、以外に慎重でんなあ。モタモタしてたらせっかくの大チャンスが逃げまっせ」
「ただ単に、あんたが慎重でないだけだろが!」
俺は心でつぶやき電話を切った。
しかし内心俺は中本の用意周到さに感心していたのも事実だ。
その後、計ったように中本から電話があった。
やつは言った。
「太田さん。新聞の記事見ていただきましたか?今朝から、あの記事を見てたくさんの投資家から電話がかかってきています。田主社長との最終契約を来週の金曜日にして欲しいんですが」
今日は金曜日だ。
要するに残りの9億円を一週間で用意しろというのだ。
他からラブコールがあるとは言え、かなり急いでる感じだ。
しかし俺は
「最終的にロンドンにいる友人からの確認待ち」
と言うスタンスを崩さなかった。
「しかし、当の田主社長はやる気満々ですよ。なんとか、他の投資家は押さえますから、契約を早めて欲しい」
と頼まれた。
奴の語気が妙に急いでいるのが気にかかった。
「いや、今最終のリーガルチェックをしているからしばらく待つように」
「わかりました。なかなか慎重なんですね。まあ、今晩もまたいつものように飲みに行きましょう」
奴は納得がいかないように電話を切った。
この冷静な俺の態度が多分、奴に次のステージに入る決断をさせたのであろう。
この日から中本は、俺に対しての作戦を変えたようだ。
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