第150話 接待攻撃
ここで、これまでの事をおさらいしておく。
鴨: 田主社長(600億保持者、すでに1億やられ中)
猟師: 中本(ヤクザの次男)
鴨の保護者: 太田(公私混同)
以上が出演者で現在、9億を狙う猟師が鴨の保護者を籠絡しているまっ最中。
俺は公私混同に少し揺らぎつつある状況。
※
次の日から中本の俺に対する接待攻撃が連日続いた。
連日というのは単なる比喩ではなく、本当に毎日新地の超高級クラブに飲みに連れて行かれたのだ。
しかもやつはロールスロイス(多分中古)を購入して、毎日淀屋橋にある俺の事務所に6時になると迎えに来てくれた。
ご苦労なこった。
ロールズロイスで新地の超高級寿司屋に乗り付けて夕飯を食べると、その後は一晩で5-6件のクラブを梯子した。
今座ったばかりで一口、ブランデーを飲んだら
「さあ、河岸を変えましょう」
と奴は立ち上がる。
「マジか?今座ったばかりだぞ!」
と女の子に派手にチップを配りまくる中本を俺は凝視した。
「遊びの達人、俺たち証券マンでもここまではしないぞー」
と正直思った。
結局、何十万の支払いも全部やつが払ったので俺の財布の出番は無し。
「これは、ハッタリかマジか?」
俺はかなり迷ったのは事実だ。
そんな迷っている俺に奴は最終プレゼントを用意していた。
今もって考えると奴は、俺の性格や趣味をかなり前から調べていたようである。
なんと俺の「軍事とアニメオタク」の共通項をやつはついてきたのである。
当時はやっていた「沈黙の艦隊」と言う原子力潜水艦を主人公とした漫画を全巻持ってきたのである。
ロールズロイスの車中で
「太田さん、これ大好きでしょう?ささやかなプレゼントです」
と言って漫画が全巻入ったカバンを俺に差し出した。
正直この攻撃に俺は揺らいだ。
もちろん金額的にはロレックスやセルラー電話に比べると大した事は無いが、やはり1番大好きな趣味を熟知してくれて、なおかつその本をプレゼントしてくれたと言う事に俺は心が揺らいだ。
公私混同のスイッチに完全に指がかかった。
※
翌日 田主社長の部屋
「太田はん、どうでっか?中本ちゅう男は?おもろい奴でっしゃろ?」
「はー、なんか連日の接待で疲れますが豪快な奴ですね。なんと時計までもらいました」
腕の金時計を指差す俺。
「あ、ロレックスのパーペチュアルでっか!よろしいでんな。ワシのと交換してくれまへんか?」
「別に構いませんよ」
俺は田主社長のピアジェの時計と交換した。
「で、ベット社の投資案件の話でっけど、残りの金を振り込んでもええでっか?」
「契約はもう少し待ってください。今ロンドンの友人に裏を取らせていますから」
「はー、さよか。割と慎重でんなあ」
「ただ単にあんたが慎重でないだけだろが!あんたを守るこっちの身にもなってくれ」
俺のつぶやき。
その後、俺は心斎橋の大丸に行きピアジェの時計を鑑定してもらった。
650万円の鑑定結果が出た。
なんか「わらしべ長者」の気分に俺はなった。
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