第122話 名古屋飲み

別に「名古屋のみ」と言う特別な飲み方があるわけではない。


我々大阪の人間がわざわざ名古屋まで飲みに行って帰ってくると言うことを表した言葉である。


関東の方は距離感がわからないであろうから敢えて説明するが大阪-名古屋は新幹線で約1時間である。


単純に東京-静岡に置き換えて考えていただいて結構だ。


そもそも営業の拠点を大阪に置いている我々の遊びの場所は大阪市内はもとより神戸時には京都と限られていた。


神戸、京都に車で移動するには同じ1時間がかかる。



ことの発端はある日我々大阪の支店の人間が名古屋の支店で会議があったときの話である。


当然くだらない会議が終わったらストレスの発散のために名古屋支店の連中と栄と言う繁華街に連れて行ってもらった。


俺たちは「大阪弁を話す」と言う単純な理由だけで漫才を聞いてるみたいって言われてモテた記憶がある。


しかもその頃はわれわれは大阪のありとあらゆる店を絨毯爆撃していたので目新しい店に事欠いていた頃である。


まあある意味大阪の飲み屋に食傷気味であったわけだ。


そして名古屋の店から出て我々が宿泊するホテルに向かった時に1人の社員の言ったことが引き金となった。


「今から最終の新幹線で大阪へ帰れるよな」


「言われてみれば・・・」


その日は予定通り一泊して大阪に帰ったのであるが、この一言によって次の週からは会社が終わってからわざわざ名古屋まで新幹線で行って飲むと言うのが我々の楽しみとなったのである。


まぁちょっとした異文化のプチ海外旅行の感覚もあった。


新幹線の切符代は片道6000円位だったような気がするがご存知のようにそんなものは全然気にする必要は無い。


毎晩タクシーに2-3万円払っていたから。


飲み屋の値段も大阪よりは少し安かったように記憶している。


何よりも新鮮だったのはやはり姉ちゃん達の大阪人に対する態度である。


大阪の飲み屋の姉ちゃんは我々大阪弁を話す人間に当たり前だがあまり驚いてはくれない。


しかし名古屋の姉ちゃんは反応が良かった。

これは安上がりだ。


ある時姉ちゃんとしけ込んでいたら終電の新幹線に間に合わなくなってしまい一泊する羽目となったのであるが結局は朝一の新幹線で大阪に帰っても充分出社時間には間に合ったので何の問題もなかった。


こんなことを何度も繰り返していると逆に名古屋支店の連中が大阪に夜の街に来るようになった。


当然俺たちが最初はエスコートしてやるのであるが後になると俺たちが知らない間にも何回も来ていたらしい。


また名古屋の姉ちゃんたちも休日には大阪観光に来るようになった。

観光のアテンドはもちろん俺たいがやる。


このように日本中で全く意味のない無駄な金がジャブジャブ回っていた時代だったのである。


また今回の話とは少しちがうが例えば月曜日に東京で会議があった場合なども素直に新幹線で東京にいかず、わざわざ金曜日の夜から大阪空港からソウルに行ってお遊びして月曜日の朝一の便で羽田に着いて会議に参加したこともある。


普段大阪市内の夜に勉強している韓国語の本場での実践、実地検証であった。




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