第121話 乳の屋

またもやクレイジーなことを書かないといけない。

今回は正直ヒヤヒヤものだ。

太宰治がいたら絶対に言うという思う。「人間失格」と。



牛丼チェーン店の「吉野家」はみなさん当然ご存知だと思う。


バブルの絶頂期にこの「吉野家」をもじった「乳の屋」というのが大阪・難波の桜川にオープンした。

多分ネットでも検索したら出てくると思うしかつて島田紳助がよくトークのネタにしていた。


乳の屋ルール

牛丼一杯が10000円


しかし誰もそれだと行かないのは明白である。


乳の屋は多分「食」と「性」を融合した日本で最初のパイオニアなのである。


「はい、お待たせ!牛丼です」とオッパイ丸出しのお姉さんが小さなフリルのついたエプロン姿で給仕する。

流石は屋号に「乳」を冠するだけあって全てのスタッフには巨乳でしかも形のいい子を揃えている。

当然ノーパンなので歩くたびにエプロンの横からはたわしが丸見えだ。


同じコンセプトでバブルのだいぶん後に「ノーパンしゃぶしゃぶ」が登場したがこれはあくまでも鏡張りの床でノーパンの女の子が給仕をするだけで芸能性に欠ける。


「似て非なるもの」を書きたい。


正直「乳の屋」を書くことはいかにバブルの実体を赤裸々に伝える任務とはいえ気が引ける。

おそらくもうすでに地に堕ちているであろう俺の人格を間違いなくさらに一段下げるからである。


しかし任務だから仕方がない。どうせ書くなら元気よく書きたい。


先ほど述べた「芸能性」の言葉を説明する。


この「乳の屋」は1時間おきに「カランカラン」と大きな鈴の音が聞こえてきていわゆる「ショータイム」が始まる。


するとさっきまで牛丼を食べていたお客さん全員が1000円札を握って床に寝る。

隣の人とは少し間隔を空けるルール。

ずらっと10-20名のお客さんが並んで寝ている客の顔の上をお姉さんがゆっくり跨いで歩くショーである。


当然ノーパンなので女性器が丸見えである。

渡り終えたら1000円をお姉さんに手渡す。非常にシンプルだ。


また1時間すると「カランカラン」の音がする。


今度は吹き矢を持ったお姉さんがやつてきた。

お客さん全員はまた1000円を握ってショーが行われるステージに集まる。


ステージに寝転んだお姉さんは自分の女性器に大きなストローのような吹き矢を当てて3mほど離れた壁にかかっている風船に向かって腹に力を入れて「フン」と言うやいなや矢を放つのである。


一発で当たることもあったがご愛嬌で2-3発目にだいたい当てていた。


風船が割れたら大喝采のなかで握っていた1000札が乱舞する。シンプルだ。


あとは一時間おきにカランカランがなり、ここでは書けないようなショーが連日繰り広げられるのだ。


観客同士も知らない仲であるがこのサービスを提供されたらすぐに意気投合する。


帰る際に店長から「来週からオーストラリア牛が入荷します!」との案内を受けてまた勇んで牛丼を食べに行くと豊満なオーストラリア人のお姉さんが給仕とショーをやる。


顔の上を跨ぐオーストラリア人のお姉さんの女性器をながめながら「割れ方は日本人のお姉さんと同じだな」と冷静に観察したことが今や懐かしい。


また「乳の屋」は2時間、40万円で貸し切りができたので支店の忘年会の二次会でよく使用した。

40名くらいで行くと結局いつもと同じ金額になる。安いもんだ。


いつもは怖い、あの支店長が1000円札を持つ手が震えるほど一番興奮していたように記憶している。





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