第116話 ホステスの波状攻撃
俺はもちろん日本の高級クラブにはよく顔を出していたし、そもそも新地のクラブにおいては前述したように俺はホステスに経済学を教える仕事もやっていた。
しかし知れば知るほど日本の高級クラブのホステスの生態は嫌になることが多かった。
何が嫌かと言うと以下の3つの「品がない攻撃」である。
1 「同伴」制度
同伴と言って出勤前にホステスと一緒に食事をしてそのあとクラブに連れだって行く制度があった。
この時に神戸和牛店や一貫5000円の大トロ握り寿司のような超高い店に連れて行かれた。
あらかじめ「何でも好きなモノを頼め」と言ってあるがとにかくやつらは「明日、地球がなくなる」ような勢いで高いモノをガンガン頼む。
食事代2-3万円に同伴料として1万円近くをクラブに払わなくてはならない。
ここまでで客とのクラブ代金を入れてまず約10万円の覚悟。
2 「おねだり」制度
クラブに入ってソファーに座るとホステスが俺と顧客の隣に艶かしく座る。
隣のホステスの胸元の谷間を眺めながら顧客と酒を交えての歓談が始まる。
すると歓談に一段落ついたら「私たちも飲みたい」とこう来る。
ホステスには毎月のノルマがあり、顧客を何人引っ張って来るかというのと高い酒をいかに多く買わせるかであった。
こちらも毎日がノルマ漬の権化であるから彼女たちの気持ちも分からなくはない。
しかし証券マンが言うのもなんだか兎に角節操がない。
みなさんもこの時代に1本30万円のドンペリの栓が一度に何本も景気良く開けられたという話を聞いたことがあると思う。
このシーンが展開されるのである。
しかも毎晩ね。
まあ、相手は何千万円を株で儲けた客と経費使いたい放題の証券マンだから当たり前か。
おねだりには高級酒以外にも一皿1万円の果物(りんごやぶどう)や外注の一舟3000円のたこ焼きなどがあった。
ここまでで注文した「おねだり」の数にもよるが20万円以上は確定だ。
3 「おみやげ」制度
しかし、安心してはいけない。
まだホステスの波状攻撃は終わらないのだ。
店が終わってホステスと夜食を食べるプロセスが残っている。
そのあとホテルなどにしけ込むのであるが最後の関門だ。
帰るときに一緒に同行させられるのは
1 大人のおもちゃ屋さん
2 最高級の下着屋さん
大人のおもちゃ屋さんは「1人で行くのは気恥ずかしいから」と言う理由で何度も連れて行かされ、電動マッサージなどを買わされたことがある。
これはまあ、いいとする。
実は大人のおもちゃ屋さんは俺も興味があったから。
腹が立ったのは下着屋だ。
ある日ホステスに「パンツを買ってくれ」とねだられた。
「ああ、いいよ」と軽く答えたのが運のつき。
まさか世の中に5万円のパンツがあるとは思わなかった。
シルクのキラキラしたラメが入った赤色パンツに5万円の値札が付いてある。
「なあ、これって高くないか?」
と俺は言うと
彼女
「あっ、高い?じゃあ負けてもらおうね」
と言って店員さんと交渉して2枚で8万円にしてもらった。
結局、俺は要らないことを言ったがために2枚のパンツに8万円を払うことになるのであるがこれは果たして値切ったことになるのかどうか30年たった今でも疑問である。
また小さい子供なら乗ることができるような大きさの当時大人気だったオグリキャップのぬいぐるみを4万円で買わされたこともある。
学生時代によく「京都の祇園で一晩遊んだら30万円はかかる」と言う話を聞いて「世の中にそんな金を使って豪遊する人間がどこにいるんだろう」と思ったものであるが何の事は無い自分が毎日のように似たような金額を使って遊んでたのである。
あ、遊びではなくて仕事ね。
あなたはこの波状攻撃に耐えれますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます