第109話 兆の単位

尾上縫の話をする前にもう一度「兆円」と言う単位のお金の値打ちを考えてみたい。


とかく日本人は「隣のスーパーマーケットの方が野菜が10円安い」と言う細かい情報には敏感で、長距離を歩いてでもそちらのスーパーに行って10円安い野菜を買いに行こうとする。


しかしこれが「何千億円台」の話になってくると全く感覚が麻痺してくる。


「なになに銀行が何千億不正融資をした」とか「トヨタの売り上げが10兆円を超えた」とか、とにかく大きな金額になったら「あーそうですか」みたいな感じで軽く聞き流す風潮がある。


まあ他人事だから自分には関係ないという深層心理が働くから仕方ないか。


ここで基本的な話であるが何千億以上の金額で一体どのような建造物が立てられるかと言うことをちょっと考えてみたい。


尾上縫と言う一個人が2兆7000億円を銀行から借りたと言うことをまず頭に入れてじっくり次の表を見てもらいたい。


クフ王ピラミッド(大林組試算) :1250億円

東京タワー:30億円

東京ドーム:350億円

瀬戸大橋(全線): 1兆2000億円

明石海峡大橋 :5000億円

関西新空港 :2兆2000億円

東京スカイツリー:650億円

あべのハルカス:760億円

ブルジュ・ハリーファ(828mの塔): 1500億円

東京都庁: 約1600億円

東京ディズニーランド:約1800億円

横浜ランドマークタワー:約2700億円

六本木ヒルズ:2700億円

ディズニーシー:3350億円

青函トンネル: 7455億円

東京湾アクアライン : 約1兆4,409億円


いかがであろうか?日本はおろか世界中の有名な建物ですらが何兆円と言う単位もかからないのである。


つまり当時2兆7000億円を自由に使えた尾上縫はその気になれば一個人で、クフ王のピラミッドを20個、または東京スカイツリーを40本立てることができる。



また我々証券マンは顧客に対して何兆円というお金の大きさを示す説明として以下のようなことをよく話したものである。


「まずは、毎日100万円を気合を入れてビルの屋上からばらまいてください。なかなかできないことですよね。」


「はい」


「それを10日間続けてください。いくらになりますか?」


「1000万円ですね」


「はい、頑張って100日続けてください。いくらになりますか?」


「1億円ですね」


「はい、さらに頑張って1年続けてください。いくらになりますか?」


「3億6500万円ですね」


「はい、さらにがんばって10年続けてください。いくらですか?」


「36億5000万円ですね」


「さらにがんばって100年続けてください。いくらですか?」


「365億円ですねね


「この辺りで多分あなたは死にますが孫子の代に遺言で1000年続けてください。いくらになりますか?」


「3650億円ですね」


「はいもっと頑張って2000年続けてください。いくらですか?」


「7300億円ですね」


「まだ1兆円に届かないですよね。つまりイエス・キリストが誕生してから毎日100万円をばらまいて2000年たってもまだ1兆円にならないのです」

と言う話をよくセミナーでしたものである。


なぜ今回はくどく説明するかというと「兆円」の理解をしっかりとして欲しいからである。


でないと尾上縫の本質を理解できないからである。


引いてはバブルの時代そのものの本質もわからないからである。


準備はいいだろうか?


まずはここまでの話を理解していただきたい。

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