第81話 法人攻略作戦4



俺は手っ取り早く法人を攻略する作戦として3年目にして次の手段を構築した。


大阪には高級のクラブが立ち並ぶ「新地」と言う場所がある。

ここは東京では銀座に匹敵するハイクラスが飲み食いする場所である。


その中でも俺は1番値段が高い伊勢(仮名)と言うクラブにある作戦を思いつき通いつめた。


通いつめた理由はこの店が大阪で超高級でもちろん値段が高く、ここに集まってくる人たちは上場企業の社長や医者、弁護士、芸能人、(時々ヤクザの大親分)が多かったからである。


毎日のように店に通い詰めると当然ここのクラブのママと仲良くなる。


彼女は30代の雇われマダムであったが俺か若いと言うこともあって非常に親近感を覚えてくれた。


ある時、俺は彼女に提案した。


「このクラブは非常に高級クラブで有名であるが、さらにもう1段階レベルを上げないか?」


「どうしたらレベルが上がるの?」


「俺が毎日来て、ここのクラブのホステスに日経新聞の読み方と四季報の読み方をレクチャーする。そのかわり俺には今後タダで飲み食ませてくれ。これは授業料だ」


「それはいい考えね。クラブの子たちも喜ぶと思うわ」


賢いママの判断で早速次の週の午後5時からホステスに対する経済学授業が始まった。


「はい、今日の日経新聞はこことここを読むこと」

と俺は赤いマジックで新聞に印をつけて意味を教える。


「はい、今日予約の○○社長の会社の株価はこれ。最近上がってるから機嫌いいはず」


などと20名くらいのお姉さんたちにわかりやすい言葉でレクチャーしていく。


参加するお姉さんは真剣に聞いている。

ママも横で聞いている。


授業の評価はよくて、彼女たちも常々ハイクラスのお客様から経済の話や株の話が出ても切り返せなくて困っていたそうである。


逆にお客様からしても今日のソニーの株価ぐらいすらすらと出てくるような女の子と話がしたいし何よりも退屈しない。


余談ではあるが現在の高級クラブは馬鹿話しかできないホステスばかりで逆にこちらが奴らのくだらない話に合わせなければいけない。

これなら高い金を払って一体どっちが客かわからない。


1ヵ月もこのレクチャーをやると効果はてきめんで客からは「非常に経済と株のことをよく知ってるホステスが集まる店」と認識してきた。


こっちの作戦どおりである。


こうなると最初は「経済なんか難しくて嫌だ」と言っていたホステスも勉強してお客がドンドンついてくるホステスの実態を知り、「私にもぜひ教えて」とやってくるようになった。


やはり「賢いホステスに客がなびく」ものだと言う基本原則である。

客にとってアホのホステスは疲れるだけである。


そしてその頃には俺は「ホステスの経済先生」と言う役を確立した。

講義が終わったらクラブのママは当然俺にはタダで飲ましてくれていた。


しかも時々来る大手企業の社長さんや医者たちにわざわざ俺のことを「経済の先生」だと言うことで紹介してくれたのである。


すると客は「あーそうか、だからここの店の子は経済に強いんだなぁ」とか「君がここの子の経済先生か。まぁ座って飲みたまえ」

などと経済の先生と言う立ち位置で紹介してもらえるものなので一気に信用を勝ち取ることができた。


当然その後には顧客にすぐになってくれた。


今考えるとこの方法が1番顧客を獲得するに近道だったように思う。


漁業は「一本釣り」よりも「トロール漁業」に限る!

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