第65話 博打好きな証券マン
証券マンについてよく言われる表現が「人の金で博打をやってる人種」である。
人の金であるから無責任に「この株がいいですよ」「あ、下がりましたね」「上がりましたね」などと毎日のんきなことを言っている人種です。
私生活で証券マンほど博打好きな人種を筆者は知らない。
つまり仕事も「博打」趣味も「博打」なのである。
まあ一貫していて結構なことは結構なのであるが物事には自ずと限度があろう。
以下証券マンの博打の実態をご報告します。
1 麻雀
まずこれはもう証券マンにとって国技みたいなものである。
入社して「麻雀ができない」とわかっただけでもうその人間は社内での市民権はなかったように思う。
だから大学で麻雀を経験しなかった人間も心を入れ替えて真剣に覚えるようになっていた。
当然この連中は我々麻雀セミプロにとって格好のカモとなった。
そういえば社内用語で「藤原指数」というのがあった。
東京株価指数やニューヨーク株価指数と同じようにわが支店内にのみ存在する指数である。
こら何を意味するかと言うと新人の藤原(麻雀初心者)が今日どれくらい所持金があるかというのを測る目安なのである。
「おい!藤原!今日の藤原指数はいくらだ?」
と聞くと彼は財布の中を見つめて「3万です」と答えるともう我々の頭の中はいかにして早くこの「3万」を取り込むかということであった。
もちろん藤原くんは大学で麻雀をやったことがない。
そして彼はそれを真剣に覚えようとしている。
今日の藤原指数は3万円である。
これほど美味しいシチュエーションはない。
ようはあとは誰がその3円万を取るかだけである。
罪の意識0である。
ちなみに藤原君のあだ名は「ATM 藤原」であった。
ルールは別の項(42項)でお話したように麻雀本来の形をすっかり変えいて証券業界ルールとなっていた。
つまり「超インフレ麻雀」である。
またレートが目の玉が飛び出るほど高いので本当に給料がそのまま麻雀の負け金に消える人はザラにいました。
リーチ棒一本が1000~3000円でした。
2 高校野球
当然夏と春の定例行事であった。
この勝ち金で新車を買い換えた豪快な課長もいたくらいである。
PL学園がホームランで優勝した瞬間にいきなり仕事中であるが「ガッツポーズ」をする課長。
「あ、PLは課長の母校ですか?」と聞くと「今のホームラン1本の値段が300万円や!」と言った。
高校球児たちに感謝しろよほんまに!
3 相撲
これも結構皆さん熱くなっていました。
千秋楽に至っては何十万の金が支店内で行き来していました。
この相撲だけは非常に便利で試合結果がクイック(株価がわかるコンピューターの端末)の下の欄にリアルタイムで流れるようになっていました。
それだけ証券業界に需要があったということですね。
4 ゴルフ
はっきり言って証券マンでゴルフがうまかった人間を筆者は知らない。
クラブを子供のようにぶん回すだけで何の計算めいたものなくコースに立っていた。
最終的にグリーンに乗った瞬間、「このパットに1万」「私も1万」「俺も1万乗った」なんて打つ前に金額がどんどん上がっていく。
一打3万円のパットであるから緊張して本来の力が出なかったと思う。まあ本来の力自体が大したことはなかったが・・・
ドラコンやニアピンなんかは本当に宝島でした。
いずれにしてもすべて賭けなければ動かない人が多かったのは昔だけでしょうか、
「飲む・打つ・買う」という言葉がありますが私の証券マンの印象はただ単に「打つ・打つ・打つ」でした。
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