第64話 鎌田の爺い 降臨 5
午前9時
「太田さん、3番に鎌田さんからお電話です。ダースベイダーです」
「はーい、今取ります」
さて今度は神は太田くんにどんな試練を与えたもうのか?
「はー、 太田はんか?」
と例によって鎌田さんの電話は苦しそうな長いダースベイダーの呼吸のような枕詞で始まる。
「はい、おはようございます」
「あのなぁ、今朝の新聞で見たんやけどこの前1000株買ったヤクルト、昨日えらい下がっとるな。2割ぐらい下がっとるで」
「はい、これはヤクルトが昨年、業績が良かったから2割の無償増資(今で言う株式分割)をやったからなんですよ。だから20%株価が下がっているんです」
「なんでや?業績がいいのになんで株価が下がるんや?普通は逆ちゃいまっか?」
「いえ、株価が下がった分だけ鎌田さんの持ち株が増えてるんですよ。たしか1000株お持ちでしたから2割増えて、今は1200株あるんですよ。よかったですね」
「なんでええねん?200株なんて売るのは無理やないか?株は最低1000株単位の売買っていうのは知ってるで」
「だから200株は『端株』と言って端株買取請求という用紙を出せばそのだした日の終値で買い取ってもらうことができるんですよ」
「ほな指値はできるへんのか?」
「はい、あくまでもその日の終値ですよ」
「もしその終値がその日一番安かったらどうするねん」
「はあ・・・その時は不運と思って諦めてください」
「ほら見てみやっぱり損にしてもたがな。はー(ダースベイダー風ため息)」
上場企業は業績が良くなると株主優待策の一環として無償増資を行うものである。
つまり単純に株主の持っている株数が増えていくのである。
この場合には2割の無償増資(今で言うに株式分割)だから1000株が200株増えて合計1200株になる。いいことである。
しかし株価は「値落ち」と言って前日より2割下がるのである。
ダースベイダーはこのいきなり2割下がった株価を新聞で見ていて驚いて電話してきたのである。
しかし当時は株式分割できるほどいい会社の株はすぐに元の株価に戻す傾向が強かった
以前の Yahoo 株を見ていただければお分かりであろう。
つまり一旦は値は下がるが一週間ほどで元の値段に戻る。
これを「無償分を埋める」と言った。
つまり株価が元に戻ったので株数が単純に増えることになるのである。
最高にいいシチュエーションである。
ラッキーこの上ない。
しかし前述のように増資された200株というのはたしかに相場の中では売れない。
もしどうしてもこれを換金したいのなら「端株買取請求」なるものを出す。
おいおいダースベイダー!2割儲かってるのに今更ケチなこと言うなよ!
トホホ
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