第58話 クレームの嵐を乗り越えて
普通の会社でクレームと言う単語はある意味やってはいけない事、タブー、禁句なんであろうが、毎日が不確定な商品を不確実な人間が販売している証券会社にとってクレームなんて日常茶飯事である。
以下によくある顧客の怒りの表現を震度の低い順に並べてみた。
「アンタラの言った銘柄で当たったためしがない!」
「自分の親に勧められるのか?」
「ちょっと上がったらすぐに売らそうとする」
「乗り換えばっかりで結局手数料損や」
「大手客だけ儲けさせんやろ」
「勝手に売買するな」
「そんな話は聞いていない」
「株券出庫するぞ」
「金返せ」
「損を埋めろ」
「話が違う」
「支店長出せ」
「財務局に言うぞ」
「出るとこ出よう」
「暗い夜道は注意しろよ」
最初の5つ位は全然これに相当しません。
これぐらいだと普通の挨拶程度にしか聞こえないのだ、まじで。
それどころか慣れてくると心地良い子守唄のように聞こえるから不思議なものであるが、後に行くほど震度が大きいのでその対処のいかんによっては遺恨を残すことになり悶々として毎日が続くことになる。
つまり仕事どころではなくなってしまうのだ。
証券マンはいつ頃か次のような法則に気がつく。
まぁ当たり前と言えば当たり前であるが、人間は火山と同じでいつも怒ってる人はあまり怒らない。それよりも普段はおとなしい人が怒ったらそれはもう怖いの!
普段はよく言うことを聞くお客ほどいちど切れたら恐ろしいものだと言う普段の生活では当たり前のことをもう一度身を持って再履修するのであった。
しかし現在でも俺が勉強になったと思ってることが1つだけある。
証券マンの朝一番の仕事は前日の相場で大損(何百万円から何千万円)をしてクレームの電話がかかってきそうな客に逆に先制パンチの電話をかけることであった。
つまり嫌な客ほど先に電話をかけろ、と言うものである。
これは大変勇気が要る行為ではあるが、この考え方は何十年も経つた今でも役に立っている。
「電話がかかってきたら嫌だなぁ」と思っていると1日中憂鬱で仕事にならないのである。
しかし勇気を持って先に電話をかけとけば「こいつ朝1番に電話してきて俺のことを気にかけてくれているんだな」と問題のクレームの震度も少しは和らぐものである。
教訓
クレームは心地よい子守唄、いちいち気にしていたら仕事にならない!
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