第54話 逆ナン攻撃 1

「おい、大田、3番に電話だ。早く出ろ!」

「はい、太田ですあー〇〇さんですか?え、コンパ?今日の夜?あ、はいオッケーです」


「おい大田、今度は1番に電話だ!」

「はい大田です、✖︎✖︎さんですね。今日の夜ですか?今日は約束が入ってます。明日の夜お願いします」


この○○とか✖︎✖︎は同じビル内のテナントに働く姉ちゃんたちである。


ナンパとは従来男が女の子を引っ掛ける行為であるがバブルの時代はこのような証券マンを狙った逆ナンが横行した。


前述した通り証券マンは普段から金遣いが荒いから内情も知らず「金のなる木」だと思っている女が多く存在し、鵜の目鷹の目で独身の証券マンを狙った女性から格好の攻撃対象になった。


特にひどかったのは隣の都銀の姉ちゃんたちであった。

なぜなら彼女らは我々に毎月振り込まれる給料やボーナス、預金残高の金額を直接通帳を見て知っているからであった。

またランチも時々一緒になるのでこちらの性格もあらかたわかっている。


要は性格もチェックできて将来の夫の資産状況を常に監視できる立場にあったから攻撃にも力が入る。


さらにしつこかったのが同じビルの中にあった薬局のお姉さん方であった。

こちらも真剣に将来の旦那さん探しを試み目論んでいたのでその攻撃方法は直接的で刺激的であった。ただ都銀の姉ちゃんたちとは少し毛色が違い「敷居が高い」のかいつもご馳走になっていた。


まして職場が近いので毎週飲みに行っててた記憶がある。


薬局姉ちゃんたちに誘われたコンパでは必ず「薬局で余ったから」と偽ってコンドームを渡される。すぐに使おうという意味だろう。


俺は「俺のはデカイからサイズが合わない」と固辞すると「こんど店で試着して!」と迫られたことがあった。


またある時は結構値段の高い精力ドリンク剤をコンパに持ってきたりしての現物攻撃であった。


彼女たちと一度コンパしたときにこういうことがあった。

酔った挙げ句に「じゃんけんに負けたらラブホに連れて行くぞ」と言うゲームをやったら彼女たちはゆっくり後出しでわざと負けていた。


当然そのあとにはラブホに行き、やることはやって帰るのでかなりの高確率であのお姉さんを媒介にした「兄弟」が支店内に存在したはずである。


それぐらい執拗な攻撃を受けながらも激務をこなす毎日であった。

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