第50話 クレイジー社内旅行 その2
5月1日朝7時
「はい、みなさんバスが出発しますから早く乗ってください」
支店の前に横付けされたバスに社員たちが順番に乗っていく。
「ささ、支店長どうぞ上座へ」安部部長が手もみしながら案内する。こいつのあだ名は「腰ぎんちゃく」
「おうすまんな」
まずは各課長連中の支店長への忠誠心披露大会がはじまる。
「支店長、これビールとつまみです」
「おうすまんな」
「これ家内が作ったから揚げです、つまみにどうぞ」
「おしぼりです」
「おい太田君カラオケは支店長の18番を用意しただろうな」
「はーい」
忠誠心披露大会が一段落したらバスの前方を占める管理職が朝から下手なカラオケと酒盛りが始まる
とにかく「飲む」「飲む」「飲む」
ほかにやることないんかい?
そのためにバスは道中、何回もトイレ休憩となって時間が遅れることはなはだしい。
しかもトイレ休憩で行ったきり他の団体のバスに間違えて乗ってる奴
山道に入って車酔いが加わったのかバスを降りたとたんにそこらへんにゲロを吐きまくる奴
子供の遠足のほうがまだ手がかからない
そして無事旅館に到着する
ふらふらの足取りでバスを降りる一同
当時はバブリーだったのでその地方の一番いい格式の高い旅館をだいたい使っていた
女将を中心にスタッフたちが全員頭を下げて出迎える。さすがは一流旅館である。
旅装を解くと早速市内観光
しかし前述のようにほとんどの管理職は朝から飲みまくっているから不参加!頭が痛いから夜の飲み会に備えて寝るらしい。こちら若手組にとってはラッキーこの上ない。
そして前章で述べた狂乱宴会へ突入する
問題はその後である
酔うと目がすわり露出狂に豹変する磯崎課長の出番である。
彼の口癖は「酒は裸で飲むのが一番!」だそうである。
早速浴衣を脱いで全裸になった磯崎課長は「いいぞいいぞ!」「やれやれー!」の掛け声の中ぶらぶらさせながら舞台中央に胸を張って登場した。柔道をやっていたので結構ガタイはいい。
女子社員は「いやだー」と両手で顔を隠しつつきっちりぶらぶらを隙間から見ている。
そして課長はお菓子会社のCMで当時流行ってた「ムキムキマン体操」を元気に全裸で披露している。
天真爛漫とはまさにこのことだ。
この後が問題なのだ
「気分がいいからこのまま一回りしてくる!」と豪語した課長は生まれたままの姿で宴会場を抜け出して「一般人」のいる外に出る。
「太田、心配だから付いていけ」他の課長の指示のもとに後を追って宴会場を出る太田君。
そこで太田君が見た光景は一生忘れない。
旅館の入り口で他の団体女性客が入ろうとしている前で全裸で胸を張って仁王立をしているのだ。
さすがにぶらぶらしているイチモツは仁王立ではなかったが。
「きゃー」「何―?」と一斉に悲鳴が上がるエントランス
修羅場とはこのことである
緊急事態発生でかけつけた複数の旅館の男性従業員に引っ張られて「強制退去」させられる磯崎課長。
「課長ちょっとやり過ぎですよ、みんな驚いてますよ」
「そんなもん、向こうの勝手や!」完全に目がすわっている
普通格式の高い旅館は帰るときはバスが見えなくなるまで女将やスタッフがおじぎをして別れの挨拶をするのが通例である。
翌日、バスで出発するときに旅館の女将をはじめ誰も見送りをするものはいなかった。
後で聞いたが「出入り禁止」だそうである・・・
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