第49話 クレイジー社内旅行 その1
4月25日 12時
「あの太田先輩、ちょっと相談が・・・」
太田君の大好きな井崎ちゃんがやってきた。支店内一のべっぴんさんである。
「お、もしかしての告白?」と勝手にときめく太田君
「先輩は来月の社内旅行の幹事でしたよね」違う話になりそうなので少しがっかりの太田君
「おう、そうやけどどうしたの?」
「去年の社内旅行でいやな目にあったのでキャンセルします」
「エー!キャンセル?もう一週間切ってるからお金戻らないよ」と言いつつ去年何が彼女を襲ったかを回想していた。それは夜の宴会の地獄図であった。
「お金が戻らないことは問題ないんです。同期3人ともキャンセルします」
「さ、3人全員?」一気に社内旅行の華が欠けた。
現在のようにセクハラとかパワハラなど完全無縁の時代の話である。
問題の夜の宴会は旅館の大広間を借り切って全員で食事をするのであるが点数を上げたい営業課長が「おい、○○さん支店長の横に座ってお酌をしなさい」と命じる。
「はい、としぶしぶ横に座り両手でお酌をする○○さん」
空の徳利が数本ころがり、酒が回ってきたあたりから支店長は「よし!ご褒美にマッサージをしてやろう!」といい○○さんに好き放題のことをする。キャバレー嬢の扱いである。その醜態は想像にお任せするがこれに抗えない○○さん。
そしてこの支店長のお決まりの儀式が始まったら「おい、××さんも俺の横にこい」と各営業課長が同じようなことを強要する。当然断れない××さん。
そして最後はもっと悲惨な儀式が待っている。
みなさんは二人羽織という宴会芸はご存知だろうか。一つの浴衣を2人で着て後ろの人間が前の人間に飯をでたらめに食わすあの芸である。そもそもあの芸の目的は食物がうまく口に入りにくいことによる苦悩の表情を楽しむことであるが証券会社の場合は全く趣旨が変わる。
すなわち新入女子社員の後ろにエロ支店長やエロ営業課長が断れないことをいいことに同じ浴衣に入る。そして飯を食わす目的を無視して乳を触りたい放題触るのである。そしてそれをいやがる女子社員を見ながら酒を飲んで楽しむという愉快な嗜好である。
しかもそんなことをしておきながら翌日は全く知らん顔で「え、おれそんなひどい事をしたっけ」とか平気で言ってる始末。ジキルとハイドも真っ青である。
「そりゃ参加拒否するわな、普通・・・」落胆しながら太田君はしぶしぶ旅行会社に3名分キャンセルをお願いしたのである。
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