第48話 男はルールが肝心
非常に勉強になった話しをひとつ
4月10日 午後10時
太田君は一番馴染みのある顧客、上原社長と超のつく高級バーに誘われてバーボンを飲んでいる。
「社長、来月からカナダ行くって本当ですか?」
「ああ、別荘を買ったから家族で永住や」
「あ、この前の神戸製鋼の利食いで買った別荘ですね」
「そうやわしのルールで5億円株で儲けたら足を洗うと決めてたからな」
「でも株は今からまだまだ上がりますよ!」
「上がってもええんや。これはわしの決めたルールやからな」
「なんか勿体ないですね」
「いいか、株は博打なんや。いくらええかっこしても競馬とかパチンコとそう変わらん」
「まあそういわれてみれば・・・」
「博打は引き際だけが肝心なんや。負け時は神様が決める。金が無くなったら終わりだからな」
「はい、それはわかります」
「問題は勝ち時や、これは神様が決めれない。唯一自分が決めなければならん」
「はいパチンコで苦い経験をしていますから理解します」
「そこで自分なりのルールを決める!例えば株が1割上がったら絶対売るとか、倍になったらやめるとか数字は人によって違うけどとにかくルールを決める!これが大事なんだ」
「はい、他のお客さんでもそのようなルールを持った人がいます」
「そうやろ?わしの場合のルールは5億円勝ったら引く!これだけのことや。男はルールが肝心!!」
「そういえば先週5億以上になりましたよね」
「そうや、だから今日はお別れ会やから好きなものを飲み食いしていってくれ」
このように上原社長は言葉通り口座全部を処分してカナダへと移住していった。
その1年後バブルが弾けて大暴落が始まったが上原社長は優雅にカナダの別荘で過ごしていたのであろう。
証券会社にいて勉強になったことは会社内の上司からではなくすべて経営者の顧客からであったように思う。
それはそうである会社経営の経験を持たないサラリーマンとかたや会社経営に成功して余剰資金を株の運用にまわすほどの余裕のある社長連中では雲泥の差である。
このことだけは証券マン時代にいい経験をさせていただいたと今でも正直感謝します。
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