第43話 爆笑、証券ルールマージャン
7月7日 午後7時 雀荘にて
「おい課長、今日は7・7・7のフィーバーだぞ、今からチーピン、チャッソ、チーマンは全部ドラ扱いだ」
「えーチョロもカブもつくんですか?」
「そうや何でも有りや!バンバンいこ」
「超インフレですねえ、よっしゃ負けませんよ」
マージャンを知らない方にはちょっと退屈な話ではあるが、証券マンは毎日人の金で勝負を張っているせいか、勝負事、特にマージャン好きが結構多い。
それも好きなやつはトコトン好きである。
徹夜でも何でもOKである。
朝5時までやって、2時間ほど公園のベンチで寝てから、7時半に出社する事はざらにあった。
「手四(てし)」
「クイペーコー」
「カブ」
「チョロ」
「ワレメ」
これらは証券マージャンのルールであるが、まあとにかく無茶苦茶な理屈であるので説明すると。
場は普通は「東南まわし」であるが「東まわし」のみ。
これはすぐに相場に戻れるように時間を短縮したのである。
つまり連チャンが無いかぎり親は一回しかない。
東一局、すでに親ギメでサイコロを振る時から熱い勝負が始まっている。
もしサイコロの目の合計が9であれば「カブ」といって、その場で上がった人に2ハンつく。
そして何の数でも「ゾロ目」であれば「チョロ」といってその場上がった人に1ハンつく。
つまり親ギメの時は二度振りなので二度とも「9」が出て、親が決まった一発目のサイコロもまた「9」であれば何と東一局で6ハンつくことになり、たとえ平和のみでも「ピンフ、6パツ!ハネマーン!」となる。
それが「ワレメ」からでるとさらに倍の点数になる。
「ワレメ」とは、サイコロをふって山を取り出したところのプレーヤーが上がれば倍貰え、逆に振っても倍払うルールである。
であるからたいがいの勝負は、東一局で決してしまう。
「手四」(てし、と読む)とは、同じ牌を手の中で四枚あってなおかつカンせずに例えば、
333、345
と使う場合で1ハン役である。
「クイペーコー」は手の内にイーペーコーがあればあとのメンツはなにを鳴いてもいいというルール。
この二つの役をやられたら、ルールを知らない初心者はまず絶対何をやっているかわからないであろう。
いずれにせよ一回の勝負にかかる時間は極端に早い。
東一局で点棒がまだ一回も動いてないうちに一人がドボンしてしまう事などしょっちゅうであった。
一度、当時の営業課長と
「次の一局で来月出るボーナス全部賭けませんか?」
という勝負を挑んだ。
向こうのほうがボーナスの金額がはるかに多いからである。
「よっしゃ、乗ったぞ、いいか次の一局でどんな手でもいいから先に上がった方の勝ちだぞ。後で泣き言を言うなよ。」
「バカヤロウそれはこっちのセリフだ。」と心ので中ほくそえんだ。
結果は、まず筆者が6順目でクイタンをテンパイ、7順目で課長がリーチ。
その時の勝ち誇った顔、「即、振ったら半額で許したる!」
「バカヤロウ、テンパイはおれのほうが先輩だ」と心の中。
8順目、課長の現物を支店長が切った。五マンである。筆者はタンヤオの、二、五マンで受けていたのだ。ゆっくり倒した。
「支店長!ロンです!」その時の課長の顔は永久に忘れない。
能面のような顔していた。
しかし出した相手が支店長だからしかたない。
後日、筆者のところに来て「例の負け分の件だが、キャッシュで払うから半分にしてくれ」だと。
最初からキャッシュ以外なにで払うつもりだったのか・・・
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