第28話 資金不足とは言わせない銀行タッグ
6月2日 午後4時
「社長、内需拡大でこれからは絶対建設株が相場になりますよ、大成建設3万株ほどおねがいします。」
「太田くん、話はわかったが肝心の金がないんだよ、金が!!」
「わかりました、話は分かっていただけたんですね、すぐにうかがいます」
このあと太田君のとる行動は、S銀行のとある駅前支店の次長に電話して、一緒にこの社長のところまで同行してもらうのである。
そして相手は金がないことを理由に断ってきているだけに、逆にいえば金さえあれば株を買ってくれるという判断。
そして社長室に着くなり、
「社長、大成建設いきましょうよ、ちょうど押し目ですのでいいとこ拾えますよ。」
「何度言ったらわかるんだ、ないんだよ、金が」
「それではちょっとご紹介させていただきます。S銀行の山野さんです。」
「初めまして。ご紹介うけました山野と申します。社長さっそくですが、入って来る時に駐車場がありましたよね、あれは担保に入っているのですか?どうなんですか」
「いや、真っ白だが・・・」
「じゃああれで当行がザッと見て5000万ほど出せますので株を買って下さい。残りは会社の資金ぐりにでもお使い下さい。」
「ほうそんなに出るものかね、それでいつごろ金になる?」
「帰ってから融資の人間と相談しますので、なるべく早く実行できるように、ガンバリます。その代わり社長、もし融資が出来たあかつきには、当行にも定期預金のほど、よろしくお願いいたします。」
このような会話が行なわれた後、その駐車場はみごとに現金5000万に化けてそのうち3000万は大成建設株に化け、1000万はS銀行の定期預金、残りの1000万は会社の回転資金と化けたのである。
おそらく日本中の土地がこの方式で、どんどん有価証券と銀行預金に化けていったのであろう。
後日談としてこの社長は、自分の家も担保に入れ、ゴルフの会員権まで担保に入れ、ほとんどが株に化けてしまい、なおかつその現物株を担保に信用取り引きを始めて例の暴落に遭遇してしまった。
信用取引の損を埋めるために、現物を売って(もちろん、これも損である)決済したため、銀行に返す事が不可能となり、家と会員権を処分したのである。
かわいそうに全盛期は一戸建の自宅が三軒もあったのに今は賃貸マンションに住んでいる。
太田君が
「社長、マンションなら私といっしょですね」と言ったところ一言
「おまえだけには言われたくない」と言ったそうである。
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