第13話 無茶な資金調達をした銀行の末路

4月14日  

午後1時


「太田!北海道銀行のCB2000万、はまったか?」


「まだなんです」


「すぐ誰かにはめて、早く伝票だしておけよ」


「しかし課長、客も最近は銀行のCBばかりで飽食状態ですよ。つきあってもくれません!」


「それはお前のトーク不足だ!逆に『銀行は安心だから』と言ってうまいことはめこめよ。無理だったら自分の貯金をおろしてでも買うかどうかしろ!」


この項目は筆者が声を大にして言いたい今の日本が抱えている大問題である。


平成元年ごろから意識し始めたいわゆる「BIS規定」という、毛唐の作ったわけのわからないルールのために銀行は海外に拠点をだすために自己資本比率を預金残高の10%以上クリアしなければならないハメとなった。


自己資本比率とは、その銀行の預金残高が仮に1億円あって、銀行自体の資本が1000万円だとすると10%、500万円だったら5%となり、預金と資本の比率である。


当然この比率が高いほど銀行がつぶれにくいので預金者にとって安心感が大きい。


ちなみに欧米の金融機関はこの比率が30%以上がザラである。


その当時でこの水準をクリアできていた国内銀行は海外業務に強い東京銀行ぐらいであったように記憶している。


その他に上場している銀行は約70行ほどあって、その他の銀行はにわかのルール改正に大慌てをしたわけである。


つまり現状のままであれば、新たに海外に支店を出せないばかりか、現在海外に出している支店の存在すら危なくなるからである。


そこで、手っ取りばやく自己資本比率を高めるために考えだされたのが、新発の転換社債の発行である。


銀行一行あたりの一回の募集が500億円単位であったので、仮に30行が発行したとしても、1兆5000億円の資金が、このわけのわからないルールのために転換社債に流れこんだ(流れこませた)のである。


おりしも当時はダウが3万9000円のつけた後の下り坂であったので、銀行株自体の値段も例外ではなくどんどん下がっていく過程の出来事である。


つまり100円の額面で買っても株価が下がっていくために、90円台、80円台のいわゆる「額面割れの転換社債」が世の中に蔓延したのである。


さらに需給の関係から考えれば、本来は株にむかうはずの1兆なにがしかの金が額面割れの転換社債に行ったために株式相場の弱体化を招いたと言っても過言ではない。


つまりあのバブルの崩壊、株のクラッシュを産んだ元凶こそまぎれもない、毛唐の作った「BIS規定」であり、またそれを生真面目に死守しようとした銀行そのものである。


脇役としてそれを助けた証券会社も綺麗事を言っても「同罪」である。


証券会社は株式手数料の激減に伴って、転換社債の引き受け手数料は当時としては喉から手がでるくらい欲しかったに違いない。


仮にその事が株式市場の需給のバランスを崩す事が分かっていたとしてもである。


長期でモノが見えないサルと同じだ。

悲しい性よのう......

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