第12話 転換社債の「親子どんぶり」

4月13日   

午後1時


「おい!大田!小川社長に、トヨタ5万株信用取引で買ってもらえ」


「課長ダメです。今入っているタネ玉がトヨタですから親子ドンブリになります」


「株株はだめか・・そしたらタネ玉を同じトヨタのCB(転換社債)にしてから、信用でトヨタいけ!」


「CBだと掛け目が上がりますのでもっと買えます、6万株はいけますよ」


「よし手数料50万読んどくぞ」


「わかりました!」



信用取引とは現物株を担保に、お金を借りて現物の評価の約2~3倍の株が買えるシステムである。


ここぞ!という時にたくさん株を買えるメリットのかわりに、半年で決済しなければならないし、その間の金利を負担しなくてはならない。


ただしその時の現物株(タネ玉という)が同じ銘柄の時は「親子ドンブリ」といって建てられない、つまり買えないという事である。


その場合の手段としてタネ玉を同一銘柄の転換社債に代えてしまうのである。


転換社債とは文字どおり株に転換できる社債の事で額面が100円で発行される。


株との転換価格というものが決まっており現在の株価がその値段であれば同じ金額分の株と変える事ができる。


また株価が上がれば100円の転換社債の値段自体が110円とか120円とか連動して上がってくる。


前出のワラントと違って100円で買った人は、満期までもてば元本は保証されなおかつ年間2%ほどの金利が入ってくる。


つまりワラントは満期まで持てば0になるのに対して転換社債はもとの額面の100円で償還される。


100円以上で買った人は満期迄持てば損であるし、100円以下で買った人は利益となる。


「準安全君」である。


本来は株の値上がり性と債券の安全性を兼ね備えた大変優良な商品であるが、それはあくまでも長期間持ってもらう事ができて初めて言える事である。


この例のように全く株と同じ考えであれば、結果もまた株と同じになる。


とにかく証券マンは客の都合どおり長期ではもたせてはくれないのだ。


これ鉄則!

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