第23話 漂流5日目 8月22日
昨日の案で海水浴とはいったものの、ろくな食事もとってない3隻のカッターで太平洋を漂う体力の無い我々に海水浴ができるのか?
また隊員から文句を言われるだけではないか?
と否定的に考える私の顔をよそに小林大尉は
「名取短艇隊集合!本日はこの3隻のカッターの周りで海水浴をすることを許可する!総員かかれ!」と命令しました。
そのとたん3隻のカッターから元気なものから順番に「ドボン、ドボン」と水に飛び込む音が続き、ついに怪我人を除くほとんどの隊員が3隻のカッターで囲んだ水域だけですがつかの間の休息を味わいました。
私の心配をよそに多くの隊員達は喜んで水をかけあったりもぐったり、好き放題水泳を味わったのです。
「こんな大きな海で海水浴ができるとは思わなんだ」
「毎日肩がぶつかる狭いカッターの中にいたのでここはまるで天国のようじゃ」
「熱くなった体を冷やせるので気持ちがいいのう」
と全員が息を吹き返した様子に小林大尉と私は安堵の顔を交わしたのです。
またこれは大きな発見でしたがカッターの底に潜るとどこから来たのか小さなカニがカッターの外板に何匹かうごめいていて潜ってそれを捕まえた隊員から出た「今日の夕ご飯はかに鍋に決定!」の言葉に全員が大笑いをしました。
泳いでるときに海の中でたくさんの魚を見つけましたが釣り道具も何もないわれわれにとっては指をくわえて見ているだけでした。
魚を取って食べたがっていた隊員から
「今度船が沈んだら、真っ先に釣り道具を持って飛び込もう」
と冗談が飛び出しました。
このように昼間は熱い太陽の下何もすることがなかった我々も海水浴という娯楽を発見してからというものストレスが無くなったからでしょうか、お互いに笑い話が出たり、冗談を言えるようになったのは指揮をするほうからすれば大変助かったのです。
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