第19話 漂流2日目 8月19日
悪夢のような一夜がやっと明けました。
しかしこの日も熱帯性低気圧が居座って天候に恵まれずに一日中太陽の姿を見ることができませんでした。
空には我々の名取の撃沈を聞いたのでしょう、味方の飛行機が飛んで来ましたが、大きく手を振るわれわれを救助する様子もなく、通信筒という連絡メモが入った筒を海面に投げて遠くに行ってしまいました。
通信筒の中のメモには「駆逐艦に救助を要請するのでその場を動かぬように」と書いてありました。
明るくなってから見回すと、カッターに乗っている隊員は下は17歳から上は50歳まで年齢はばらばらで、しかもすべて同じ健康状態ではありませんでした。
沈みゆく名取から海に飛び込むときに漂流物にぶつかって手足を骨折したものや、打ち身などの怪我をしていたもの、すでに艦内でやけどをしていた人もいました。
カッターの中にはこのような大きな怪我をしていた人たちが10名ほどいましたが、医薬品も医療機器もない状態ですので介抱のかいなくそのうちの4名が亡くなりました。
全員敬礼の中、死体はそのまま海に流しました。
そのほかのけが人もまわりの隊員たちが
「がんばれ、がんばれ」
「味方がすぐ助けに来るそうだ」
と励まして濡れた衣服が早く乾くようにみんなで全身をさすっていましたが長く持ちそうな容態ではありませんでした。
全員の頭の中には通信筒のメモを信じてすぐに味方の駆逐艦が来るであろうと予想しましたが結局この日は待てど暮らせど救助は来ないまままた夜を迎えたのです。
「明日は救助が来るだろうか。ひょっとしてこのまま救助は来ないのではあるまいか。また救助の艦も潜水艦に撃沈されたのではないのだろうか」
と360度島も船も何も見えない星空の下で私は思いました。
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