第10話

デジタル表記は止まらなかった。

無情にも僕の目の前でカチカチと、無機質な音を出し続けている。


頭が真っ白になる。が、すぐに切り替えてさっと構造を見直す。

数秒後には全身の力が抜けていた。

わからない。これまでの処理方法に間違いもなかったはずだ。

どうすればいい?

頭の中で焦りだけが増していく。

それはアルフォードにも伝わったようだった。

「終わった?」

「いえ。多分、あと一つです」

声が強張った。残り時間は二分を切っている。

僕は視線を爆弾へ向けたまま、できるだけ冷静に言った。

「アルフォードさん、避難してください」

「言っただろ。俺はここにいる」

まったく迷いのない返事だった。僕は少し躊躇って、正直に告げる。

「その、最後の一つがわからないんです。今まではマニュアル通りだったけど、これは……」

「あと何分だ?」

「―― 一分」

「ハリーに任せる」

僕の足に置いていた手が勇気付けるようにぽんと叩く。

「お前を一人残して行ったりしない」

揺るぎない声に僕は吐息を吐いた。目の前ではデジタル数字が淡々と時を刻んでゆく。


「アルフォードさん、僕はあなたが好きです」


沈黙に、時計の音が大きく響いた。

ゆっくりと自分の言葉を反芻して、動揺する。

「す、すみません、こんな時に――あ、返事はいいです、相手がいるのはわかってます。ただ、伝えておきたかっただけですから」

アルフォードは何も言わなかった。

どんな表情をしているのかもわからないが、むしろ救いだったかもしれない。

想いを告げたことで気持ちが軽くなっていた。


僕は覚悟を決めて爆弾に向き直った。

「――切ります」

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