第5話

それから何度か彼と会う機会があった。

主には捜査班との合同捜査のためだったので、研究所で会うことはほとんどなかったが、本部で見かける時はいつも声をかけていた。


「お疲れ様です」

「お疲れ。ハリー、いいところに」

「なんですか?」

聞く前から彼は僕の手を取ると何かを握らせた。

掌を開くと一口サイズのチョコレートだった。

「さっきアルに貰ったんだけど、俺、甘いもの苦手なんだ。――ハリー、食べといて」

「ありがとうございます」

まさに疲労が溜まっていたので、そのプレゼントは自分でも意外なほど嬉しかった。

と同時に、ふと違うことを思い出した。

確か以前、研究室に来たときにコーヒーと一緒に出したチョコレートはおいしそうに食べていたような気がしたが。

アルフォードは僕に湿っぽい視線を向けていた。

「何だ。一人で笑って」

「いえっ」

しばらく不満そうな顔を向けいていたが、ふいにふっと表情を歪める。

ぐしゃっと髪を乱された。

「なんですかっ?」

「いや、元気出たみたいでよかったと思って」

そう言って慈愛に満ちた微笑を浮かべる。

その顔を直視していられず、僕は髪を乱されながら顔を伏せた。


一カ月も経たないうちに僕たちはすぐに打ち解けていた。

アルフォードは見かけによらずユーモアに溢れる男だった。

時々胸を締め付けられるような苦しさを感じることがあったが、それがなんなのか、深くは考えないようにしていた。

そしてある日ぱったり、彼の姿を見かけなくなった。

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