第18話 死ぬかと思った 1
俺の住んでいるホーチミンからカンボジア国境までは約70キロでそこから先の首都のプノンペンは300キロ。
バスで行くとなんと16ドルで行くことができる。
安い!
仕事のない時はコンビニ感覚でよくカンボジアに遊びに行ってた。
国境付近にはバベットと言うカジノの街がありベトナムとはまた違った趣きのお姉ちゃん街もある。姉ちゃん価格はベトナムより格安である。
今回の話はプノンペンのキリングフィールドに行った時のことだ。
この時は通訳のフォンと俺の普段使っているドライバーの3人で行った。
キリングフィールドとはご存知の方もいるかもしれないが1978年、悪名高きポル・ポトによって400万人が惨殺された一般国民の収容所とその埋葬された場所である。
カンボジア名物、トウクトウクに乗った我々を出迎えたのは無数の髑髏によって作られた高い塔であった。
いきなり不気味な歓迎であった。
収容所の中は拷問室や処刑室があり、クメール・ルージュと名乗る同じ国民が罪のない同じ国民を拷問しては撲殺していく殺戮の歴史がそこにあった。
そして壁には一面に殺されていった子供たちや罪のない人々の写真が無数に飾られてあった。
また収容所を一歩外に出ると埋葬場が広がっていた。
埋葬とは名ばかりで普通の林の中に死刑囚に穴を掘らせてあちこちに無造作に埋めたそうである。
今日でもまだ掘り出してない遺体が多数あると聞いた。
俺が高校時代バイクの後ろにお姉ちゃんを乗せて遊んでいた時に「東洋のアウシュビッツ」と言われるほどひどいことが行われていたなどとは夢にも思わなかった。
少し自分のでたらめな人生を反省しながらキリングフィールドを見て回っていると軍服を着たカンボジア人が1人近づいてきた。
「おい、お前たち銃を撃ってみないか?」
「銃を撃つ?」
ちなみに俺の趣味は銃である。
日本では「月刊 ガン」をいつも買って読んでいたほどである。
俺は二つ返事で「撃ちたい」と言うと、
「では、ついてこい」と言う。
金額はいくらだと聞くと1人20ドル(約2000円」と言う。
そしてやつは腰に下げたコルトガバメントを抜いてみせた。
銭形のとっつあんが持っていった本物の45口径のコルトのガバがたったの2000円で撃てる!
俺はこの引力には逆らえなかった。
男は「これを撃ちたいなら向こうのジープに乗れ!」と停まっているジープを指差す。
で我々3人を乗せたジープはカンボジアの田舎ののんびりとした道を30分ほど走った。
ジープを運転する男は指を刺した。
「あそこで銃が撃てる」と
そこはカンボジア軍の昔の砦の跡であった。
ジープは砦の頑丈な門の前で止まった。
砦の門を守るカンボジア軍の服を着た兵士と俺たちを連れてきた男が何か大声で会話をしている。
当然カンボジア語なので何を言ってるか皆目見当もつかない。
通訳のフォン君は「ちょっとやばいかも知れませんね」と言ってきた。
ベトナム語の通訳のフォンはカンボジア語を理解しないので今回の旅では全く役に立たない。
むしろ英語が話せる俺がやつに通訳してるくらいだ。
「まぁこっちも3人もいるから変なことしないだろう」俺は根拠の無い楽観的な意見を言った。
俺たちを乗せたジープは兵士が守る砦の頑丈な鉄の門をくぐった。
くぐった途端に頑丈な門は「ガチャン」という重厚な音を立てて内側から鍵をかけられた。
砦の中には同じ軍服を着た20名ほどの兵士がいて俺たちの乗るジープを取り囲んだ。
もちろん全員銃を下げている。
俺はすでに映画「ランボー」の死亡フラグがたったシーンを思い出していた。
続く
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