第15話 ハノイ逆ナン事件 1



ナンパとはそもそも男性が若い女性に声をかけるものであると少なくとも私はそう思っている。


今回ホーチミンに住んでいる俺は仕事の関係でで通訳のフォン君とハノイに行く機会があった。


ハノイの名所ホアンキエムと言う湖がある。

大きな亀がいるのが有名である。


そのほとりを通訳のフォンと一緒に歩いていたときのことである。


われわれは日本語で大きな声で馬鹿話を話していた。


するといつの間にか我々の背後に髪の長いアオザイ姿の可愛らしいお姉さんが近づいていた。


広末涼子 似ではっきり言って俺のタイプである。


何度も振り返って気にはなっていたがどうせベトナム語は話せないので無視していた。しかし終始笑顔でにこにこしていたので好印象であった。


すると我々の日本語を聞いて日本人と理解したかのように

「あのすいません日本人の方ですか」と流暢な日本語で話しかけてきた。


「はい日本人ですよ。あなたはきれいな日本語ですね」と言うと


「私はハノイ貿易大学 日本語学科の学生です」と言う。ハノイ貿易大学というと日本で言えば東京大学クラスの賢い大学である。


「そうですか、どおりで日本語が上手だね」と言うと

「ありがとうございます。ところで今お時間ありますか」と聞いてきた。今日はヒマである。というかそもそも人生ヒマである。


「いいよ。時間はあるよ」と言うと

「ぜひ一緒にお茶しませんか?」と言ってきた

「おー逆ナンか!」

可愛らしい若い女性にお茶を誘われては断る勇気もなく3人で喫茶店に入っていった。


話が日本の話題になり

「なんで日本語を学ぼうと思ったのですか?」と聞くと

「日本のサムライの文化を尊敬しています。責任を取ってハラキリする民族は日本人だけです」とえらい日本贔屓である。


最終的に「あなたはベトナムのどこの生まれですか?」と聞くと

「ハロン湾です」と言った。


ちょうどハロン湾は世界遺産に登録された後でもあり、俺もいつかは行ってみたく思っていた場所であった。


「俺も実はハロン湾に行きたかったんだよ」と言うと


「じゃぁぜひ明日一緒に私の実家に来てください」と笑顔で言ってきた。

そして明日朝5時にハノイの一角で待ち合わせをして別れたのであった。


その夜フォン君と話をした。


「おい、明日彼女は約束どおり来るかな?」

「真面目な子ですからくると思いますよ」とフォン君が答える。まあベトナム人がそう言うので来るのであろう。


そして翌朝


待ち合わせのバス停留所に朝5時に行ってみた。

すると昨日約束した彼女が大きなカバンを持ってちゃんと待っているではないか!


ハノイからハロン湾まで 200キロメートル。


彼女は通常ハノイから故郷に帰る場合はバスで帰るのであるが今回は私のチャーターした車で帰るので非常に喜んでいる。


その後5時間かけて200キロメートルを車は走りハロン湾に着いた。


ここは彼女のホームグラウンドである。


一般の旅行者とは違い俺には地元のプロのガイドがいるので格安でおいしいレストランや船による島巡りを堪能することができた。

彼女も喜んでいる我々を見て楽しそうであった。


そして夜が来た。


そろそろ俺はハノイに帰る時間である。

しかし彼女は「ぜひ今から私の実家に来てください」と提案してきた。

「あーいいよ、でもどうして?」


「両親にぜひあなたを紹介したいからです」


この辺から少し雲行きが怪しくなってきた。


確かに才色兼備の若い女性であるがいきなり実家に連れて行かれ両親に紹介されると言うのは頭の悪い俺でも今から何が行われるかと言うのは予想できたからである。

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