第4話 カレーライス 1000万円
カレーの値段は大体いくらくらいか?
と聞くと普通は「500-1000円」であろう。
今回はなんと1000万円のカレーの話をする。
と言ってもレストランで実際に1000万円のカレーが売っているわけではない。
落ち着いて聞いてくれ。
カレーのために10万ドル(約1000万円)を取り損ねた話である。
俺の趣味はカジノである。
世界中のカジノを回ってコインを集めている。
ベトナムにも五つ星ホテル以上はカジノがあり、ベトナム人以外の外国人はプレイができる。
日本のように娯楽のないベトナムでは俺は毎日カジノに通っていた。
種目はスロットである。
しかし単純にスロットが「出た、出ない」の話ではない。
俺が狙っているのはジャックポットという無差別に降ってくるボーナスのことである。
こいつは張っている金額の多寡に関係なく時間とともに突然降ってくる。
降ってくる金額は4種類あり
一時間に一回 500ドル
一日に一回 2000ドル
一週間に一回 20000ドル
一か月に一回 100000ドルである。
カジノの壁にはこの四つの数字が表示されていて常連ともなればある程度「いつ降ってくるか」がわかるようになる。
何年も通いつめているとある程度の法則が見えてくるものであるが問題は「どの台に降ってくるか」の一点である。
忍者の世界で「草」というのをご存知であろうか?
幼少のころから敵方に送り込み、信用を勝ち取って大切な情報を流す役目を担う忍者のことだ。
俺はホーチミン市内の5箇所あるカジノの女性従業員をあらかじめ「草」として養成していた。
といえば格好はいいのであるが単に食事をおごったり一緒に遊ぶ仲のスタッフを作っていた。
そう、最後の難関である「台選び」のために。
毎日カジノに勤めている彼女らはなんとなく次に落ちてくる台が4点に絞られてわかるのだそうである。
200台くらいあるマシンの中で4点に絞れれば十分勝算はあると考えた。
4つの台、全てに張ってゲームすればいいだけのことである。
そして見事降ってきたら一割をボーナスとしてあげるので彼女たちにとってもノーリスクなので悪い話ではない。
この話の舞台はホーチミン市にあるカラベルホテルだ。
土曜日の昼に「草2号」から電話があった。
「そろそろ1000万が降ってくる気配。台は201番から205番までのどれか」
優秀な草は必要以外のことは言わない。
「よしっ」とばかり身支度する俺。
戦闘開始である。
そこにカミサンが「どこ行くの?」ときた。
ちなみにカミサンはカジノ大嫌い人間である。
「ちょっと客先」とごまかす俺。
「えー今、カレーできたばっかりなのに。食べていってよ」
「急いでるから、帰ったら食う」
「せっかく作ったのにそんなあわててなんか怪しいわね」
「怪しくない!食えばいいんだろ食えば」
と玄関から戻り、食卓に着いてカレーを食う俺。
熱いのを我慢して水を放り込みながら格闘して食った。
ここで15分のロスがでた。
そして家からカラベルホテルまで20分かけて大慌てでカジノに駆け込んだ。
そこで俺が見たものは・・・・
1000万円を手にした203番の台を打つているやつ!
そしてその横で恨めしそうに俺を見る「草2号」!
しかもこの客は一見の客なので、普通は大きな金額が降ってきたら「ハッピーマネー」と称して女性スタッフに1万づつくらい振舞うのであるが1円も払わずにカジノを出て行った。
本来は俺のものだった金を持って・・・
しかし高いカレーであった・・・
とほほ
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