第3話 偽医者降臨!



おれはベトナム・ホーチミン市の繁華街レタントンでは職業を偽っている。


と言っても犯罪を犯しているわけではない。


全てのねえちゃんがいる、カラオケやガールズバーでは自分の身分詐称行為を平然と行っている。


この界隈で15年前から俺は「医者」ということになっている、しかも「乳がんの専門医」だ。


今はどうか知らないが、当時のベトナムには「マンモグラフ」という乳がん検診の機械がなく、女性の乳がんでの致死率は非常に高かったという当方にとってはまたとない好条件の時代であった。


これを使わない手はない。


理由は単純、合法的にねえちゃんの乳を触れるからである。


なにせ医学の発達した日本から来た「乳がんの専門医」など逆立ちしても彼女たちは会えることがない。


「今日は気分がいいからタダで診てやる」と胸に手を入れても揉みしだくと彼女たちは抵抗は全くしない。


場合によっては「私も診て!」と話を聞いた別のねえちゃんが向こうからやってくるから能天気なものだ。


隣に座るねえちゃんの乳を素手で揉むと「んー、両方診なければわからん」などと適当なことを言って揉みしだく。


「乳首の立ち方が重要だ」とか適当なことを言っては乳首をもてあそぶ。


揉まれている当人は診察なので、しごく従順で素直に何でも言うことを聞く。


なんせタダの検診と思っているから。


時々適当に「あ、ちょっとコリコリしてるから病院に行って診てもらいなさい」など本当に好き勝手なことを言ったりする。


この手でベトナム・レタントン地区の乳首はすべて触診した。


しかもありがたがられて!


ある姉ちやんカラオケに5人の日本人を連れて行ったときのことである。


「今日の俺の友人は全員、日本の医者だ」といつものように適当にうそをつくと「じゃあ医者の免許証を見せてよ」といつになく抵抗してきた。


「おう、これを見ろ!」と日本の自動車の免許証を見せた。


ほかの姉ちゃんたちも集まって見てる。


当たり前であるが写真以外誰も漢字を読めない。


「医者は全員免許証を持っている。おれは腕がいいから金色のラインをもらっているがこの5人はまだ新米だから青色だ。さあ、みんな医者の免許を見せてやれ」と他の5人に命令して差し出させた。


「本当だ。みんなお医者さんなのね」


「そうや当たり前や」


「あなただけ金色ってすごいね」


とこんな具合に勝手に信用してくれる。


楽勝とはこのことだ。


しかし何十人も同じ手口を繰り返していると中には「ありがとう、先生!先生の言ったとおり病院に行ったら本当に初期の乳がんだったの」という輩が出てくる。


ようは確率論の問題だ。


そこからはさらに「乳がんの大先生」の名声はうなぎのぼり!


いつかはバチが当たると思っているが止められんわ。


ベトナムで姉ちゃんを口説く作戦として一度使ってみてはいかがかな?

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