地獄において、とある女の亡者が必死になって閻魔大王様に懇願をしていた。


「ああ、閻魔大王様!! わたしの亭主は、他の女と一緒になりたいがために、わたしを殺しました!! だから、わたしは亭主のことを恨んでも恨み切れません!! どうか、わたしを幽霊にしてくださいまし!! そして、あのにっくき色狂いの亭主の前へと化けて出させてくださいませ!!」


 それを聞いて、たじろぐ閻魔大王。


「なに、幽霊とな? そ、それはいかん。あまり言いたくはないのだが、幽霊にも品格というものがあってだな。それ、そなたの顔を水鏡で見てみよ。とてもではないが、品格のある、品位のある顔だとは言えまい。気持ちはわかるが、そなたを幽霊にすることだけは、どうしても許すわけにはいかぬ」


 閻魔大王の辛辣な一言に、女の亡者は、あぁぁぁぁぁぁっ!! と大声でその場に泣き崩れた。それを後ろで見ていた地獄の鬼が、あまりにも不憫だと、女の亡者に知恵をさずける。


「おい、女。おめえのお願いがいけないんだ。幽霊になりてえとかいうんじゃなく、おいらたちのような鬼にしてくださいってお願いしな。きっと、すぐにそうしてくださるからよ」

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