第64話.ダンジョン(3)

21Fからはアンデットがメインとなる。



アンデットには属性魔法が効かない。



例えば、雷を落としたり、炎で焼いたりする魔法は効かない。



風魔法のカマイタチやサンダーガンは、貫通力や切断力があるから効く。



これは意外と厄介である。



魔法の範囲攻撃の多くは、属性魔法なので効かないのだ。



このアンデットゾーンが、冒険者としての本当の力を試されると言っても過言ではない。



最初に遭遇したのは、スケルトン。



全身が骨でできている魔物である。



目が赤く光っているのが少し不気味だ。



武器は片手剣だが、スケルトンはアンデットの中で最弱である。



スケルトンが剣を上段に構え、振り下ろす。



最弱なだけあって単調な攻撃であり、動きも遅い。



その攻撃を避けると、武器を持っていない方の手を斬った。



だが、スケルトンは何事もなかったかのように、横薙ぎに払った。



俺はその攻撃に驚きを隠せない。



他の魔物ならば、腕を斬られれば痛みで顔を歪ませ、叫び声を上げるものだ。



そうじゃなくても、一瞬動きは止まる。



でも、アンデットは止まらない。



なぜなら痛みを感じないから。



俺はその怖さを甘く見ていた。



予想外の攻撃に反応が遅れたが、横薙ぎに払われた剣を、反射的に受け止めた。



それをそのまま弾き返し、スケルトンがよろけた所を胴体を真っ二つにした。



流石に死んだだろうと思ったが、まだ動いている。



これはどうやったら死ぬんだ?



頭を潰してみるも、まだ武器を持っている右腕は動いている。



最後に心臓に一突きすると、微かに他とは違う感触があった。



スケルトンはやっと動かなくなり、数秒後粒となって消えた。



「弱点は心臓か。」



そう呟いたとき、奥からカタカタカタと不気味な音が響いてくる。



暗闇から出てきたのは、スケルトンソルジャー3体。



右手には剣を持ち、左手には木の丸い小さな盾を持っている。



さっきのカタカタカタは、スケルトンが動いたときや笑ったときに骨と骨がぶつかってなった音である。



その後ろには、スケルトンアーチャー2体。



その動きは、連携をとっているかのようだ。



スケルトンソルジャーが、剣を構えながら走り出す。



その直後に、スケルトンアーチャーが矢を放った。



矢は2本ともキレイに俺の頭目掛け飛んできていた。



あまり大きく避けると、スケルトンソルジャーの攻撃を迎え撃つの難しくなる。



だから、首を傾け最小限の動きでそれを避けると、スケルトンソルジャーを迎え撃った。



だが、スケルトンソルジャーは不要意に攻撃を繰り出しては来なかった。



そのまま突っ込んでくると思っていた3体のスケルトンソルジャーは、俺を囲むような陣形を取ったのだ。



前、左、右に陣取られた俺は、視野を広くする。



数秒、にらみ合いが続いたが、その均衡を破ったのはスケルトンアーチャーであった。



矢がスケルトンソルジャーの横を通った瞬間、矢に合わせて3体のスケルトンソルジャーが斬り込んできた。



今度の矢は、1つは頭でもう1つは胴体に飛んできていた。



ち、散らしてきたか。



しかも、前、左右からはスケルトンソルジャーが詰め寄っている。



このときの俺の逃げ道は、後ろしか残されていなかった。



ほぼ同時とは言え、先に俺に届くのは矢である。



矢を避けた瞬間、スケルトンソルジャーが剣を突き刺して来たが、その攻撃をバク転で回避する。



直ぐ様詰めより、左右にいたスケルトンソルジャーの足を斬った。



これで2体のスケルトンソルジャーの動きは封じた。



残りの1体にも斬りかかろうとするも、スケルトンアーチャーの攻撃がそれを阻止した。



スケルトンソルジャーは一旦下がり、体勢を立て直した。



うーん、連携が取れてると思ってたより厄介なんだな。



これがパーティーの強みと言うやつか。



まさか、魔物にパーティーの大切さを学ぶとは。



まあでも、攻撃パターンは分かってきたな。



まず、スケルトンアーチャーの攻撃。



その後に、スケルトンソルジャーが斬り込んでくる。



それさえ分かってれば対処は簡単だ。



上半身だけとなっているスケルトンソルジャー2体だが、器用に手を使って動き俺をまだ狙っていた。



そのスケルトンソルジャーの剣を蹴って弾き飛ばし、盾を奪った。



これで矢を防ぐのが大分楽になる。



次にスケルトンソルジャー。



こいつの攻略は下半身を狙う。



なぜなら上半身は盾があるせいで、そこそこ防御力があるからだ。



スケルトンアーチャーの矢が飛んでくる。



それを盾で防ぐと、今度はスケルトンソルジャーが斬り込んでくる。



スケルトンソルジャーが、上段から振り下ろすよりも早く俺の剣が下半身を捉えた。



直ぐにスケルトンアーチャーを見ると、矢を引こうとしているところだった。



矢を射られると面倒だ。



俺は剣を思いっきり投げた。



剣はスケルトンアーチャー目掛け、真っ直ぐ飛んでいき、スケルトンアーチャー諸とも壁に突き刺さった。



もう1体の方には、盾を投げつけて、怯んだ隙に詰めよりダガーで心臓のコアを破壊した。



「っ!」



壁に突き刺さっているスケルトンアーチャーに、止めを刺そうと横を見ると、その状態のまま矢を射ってきていた。



至近距離からの攻撃。



咄嗟に強化魔法を使った。



「キーン!」



まるで金属に当たったかのような音がする。



矢は皮膚に刺さることなく地面に落ちた。



なんとか強化魔法が間に合った。



強化魔法で強化した体は、鉄のように硬い。



だから、矢は刺さらなかったのだ。



危なかった~



傷を負うとこだった。



俺はスケルトンアーチャーに近より、ダガーでコアを破壊した。


上半身だけとなっているスケルトンソルジャーのコアも破壊した。



「ここが限界か。」



俺のモットーは魔法をできるだけ使わないことだ。



魔法で勝っても所詮は魔法の力。



さらに俺には強化魔法がある。



強化魔法は素の状態で強くなればなるほど、強化魔法を使ったときもそれに比例して強くなる。



だから、魔法をできるだけ使わないようにしている。



だが、今の俺の力ではここらが限界のようだ。



これからは魔法を解禁し、奥へと進んでいくことにしよう。



俺は魔石を拾い、先へと進んだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る