第65話.ダンジョン(4)
強化魔法を使った俺に敵はいなかった。
今までの半分以下の時間で次々と攻略していった。
30Fのボス部屋には、スケルトン・ジェネラル率いるスケルトン軍団が相手であった。
スケルトン20体、スケルトン・ソルジャー5体、スケルトン・ライダー5体、スケルトン・アーチャー5体、これら全てを指揮するのが、他のスケルトンよりも一回り大きいスケルトン・ジェネラルである。
スケルトン・ジェネラルによって、小規模軍隊と化したアンデットは統率力がとれていた。
普通なら脅威であるが、そんなスケルトン・ジェネラルらも俺の敵ではなく、1分もたたずに戦闘は終了した。
次からの階層が、Aランク冒険者推薦のレベルになる。
ここから出てくるのはBランク以上の魔物だ。
31Fからは、10F~20Fの上位種がメインに出てくる。
魔石のドロップ率は50%である。
キラースピアやキラーアント、オークキングやレッドウルフなどが、手下を率いて襲ってくる。
キラースピアは、毒針を持っておりそれを飛ばしてくる遠距離攻撃を得意としている。
その毒をモロに受けると12時間以内に死亡してしまうため、解毒薬は必須だ。
キラーアントは、ソルジャーアントよりも身体能力が高い。
さらに皮膚が鎧のように硬く、なまくらの剣では傷をつけることは出来ない。
オークキングも同様に身体能力が高い。
レッドウルフは、ワーウルフと身体能力は同じぐらいだが、口から炎魔法を繰り出してくる。
炎耐性の防具を装備していなければ攻略は難しいだろう。
36Fからは、リザードマンやナーガ、サテュロスやケンタウロスなど半人半獣が出てくる。
半人だけあって知能が高く、不意討ちを仕掛けてくる回数がとても多かった。
魔石のドロップ率は60%である。
ここまで来ると魔物の数はかなり多く、3分ごとに戦闘をやっていた。
40Fのボス部屋には、以前苦戦したオーガがいた。
ここに来て初めてAランクの魔物が出た。
だが、既に俺の敵ではなく、瞬殺した。
さて、俺の目的である40Fに到着したわけだが、敵はそれほど強くないし苦戦もしていない。
40Fを回って魔石集めをしても良いのだが、先に進んだ方がドロップ率も高くなる。
よし、進むか!
41Fからは、魔物の数は少なくなるのだが、Aランクの魔物しか出てこないようだ。
魔石のドロップ率は70%。
ミノタウロスやバーバリアン、地竜やバクベアーなどが出てくる。
強化魔法が無ければ、勝てない相手だ。
だが、強化魔法を使った俺は、Aランクの魔物を簡単に倒していく。
あれ?思ってるより俺って強いのか?
バルトのように、Aランクの魔物をこんなにも簡単に倒せる冒険者は少ない。
Aランクの魔物は、Aランクの冒険者パーティーがやっと勝てる相手だ。
それもパーティー内の魔法士の活躍が大きい。
Aランクの魔物ともなると、人の力には限界があるため普通の戦士では勝つことは難しい。
それを補ってくれるのが魔法だ。
だが、魔力にも限界があるため、ダンジョンのように何体もAランクの魔物と戦わないといけない状況では、例えAランクの冒険者パーティーだとしても自殺行為だと言える。
そんなAランクの魔物を簡単にバルトは倒していく。
既にバルトはSランクの力があった。
ミノタウロスは両刃の斧――ラブリュスを武器とし、硬い皮膚にその巨体には似つかわしくない素早い動きなのだが、その全てを俺が上間っている。
まあ、ただ1つ気を付けないといけないのが、魔力切れなのだが。
今は、速さを3倍、力を2倍、頭――思考速度を1.5倍にしている。
これを続けるとなると、持つのは3時間。
3時間以内に、45Fのセーフティーエリアまでいかないとキツい。
だが、別に強化魔法だけを使う訳ではなく、比較的魔力を使わない雷魔法でも楽に倒せるのでそっちも使っている。
これをうまく組み合わせると、時間は5時間まで余裕ができる。
また、相手によって強化倍率を変えれば、さらに時間は延びる。
バルトはダンジョンの度重なる戦闘によって、魔力を節約する術を身に付けていた。
魔法士は、魔力が切れた時点で戦闘では役に立たない。
魔力が切れると、体が何倍にも重く感じ立っているのがやっとという状態になる。
だから、どれだけ魔力を節約しながら戦えるかが魔法士の能力に関わってくる。
魔法士の基本戦術は温存だ。
パーティーがピンチの時や、短時間しか戦闘をしないとはっきり分かっているときだけ魔法を使う。
それが普通だ。
でも、本人は気づいていないが、バルトほど魔力を効率よく魔法に変換できている魔法士は、ほとんどいない。
普通の魔法士は、魔力を50%程度しか魔法に変換できていない。
残りの50%は、無駄に使っているのだ。
その分、威力のある魔法を使おうと思えば、魔力を多く使うことになり、消耗が早い。
それに比べ、バルトは90%以上魔法に変換できている。
同じ魔法で同じ威力を出そうとするとき、普通の魔法士が10魔力を使うとすれば、その半分程度で済むのだ。
5時間後、45Fまで来たがまだ余裕はある。
もうここまで来たら、50F攻略を目指すか。
物凄いドロップアイテムもあるそうだし。
当初の目的とは違うが、俺の心の中に潜んでいた冒険心が暴れだしてしまった。
でも、元々は冒険がしたくてこの世界に来たわけだし、死なない程度に楽しもうではないか。
46Fからはゴーレムやリザードマンエリート、グリフォンも出てくる。
魔石のドロップ率は80%。
ゴーレムは斬撃耐性があるため、剣の攻撃が効きにくい。
リザードマンエリートは、リザードマンの上位種で水魔法を使ってくる。
グリフォンは、鷲の翼と上半身、ライオンの下半身をもっており、風魔法を使ってくる。
Aランクの魔物には、単純に身体能力が高いのもいるが、魔法を使える魔物や耐性を持っている魔物がいる。
同じランクだが、魔法を使える分厄介だと言える。
そんな魔物達を、雷魔法と強化魔法を駆使して突き進んだ。
6時間後、ダンジョンの最下層である50Fに到着した。
今までとは違い、ボス部屋の前がセーフティーエリアとなっている。
「すげー。」
俺の目の前には、今までのボス部屋とは全然違う豪勢な門が佇んでいた。
金で施された扉には屈強な戦士が2体、両扉に施されていた。
その戦士は例えるならば、金剛力士のようであった。
この先が本当のボス戦と言うことだ。
ここ300年、攻略されていないラスボス戦。
それを、俺一人で攻略するのだ。
端から見れば無謀とも言える挑戦だ。
でも、勝てなさそうだったら逃げればいいしな。
今までのボス部屋も、扉は閉まることなく逃げようと思えばいつでも逃げられた。
だから、今度もそうなのだろうと俺は勝手に思っていた。
二時間ほど、休憩してから扉の前に立つ。
すると、扉は自動でゆっくりと動きだした。
その光景に圧倒されながらも、歩きだし門を通り抜けた時だった。
扉が勝手に閉まりだしたのだ。
「なぁ!」
突然の出来事に、対応が遅れた俺は戻ることができなかった。
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